呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
「きゃあぁっ!」
「わ、あ」
風がやんで恐る恐る目を開けると、まるで嵐が通り過ぎたかのような光景が。
作業に使っていたスプレーボトルや、ジョウロといった道具は散らかってしまっているし、抜いて集めておいた雑草もだ。カモミールにいたっては風になぎ倒されてしまっている。
「ご……ごめん、俺……またやらかしたみたい……。さっきより少し強めにして、洗い流す感じにしようとしただけなんだけど……」
金色の瞳に、涙が浮き上がってきた。
拳を握りしめて震えている。
「なんでいつもこうなるんだろう。こんなに魔力があったって、役に立つどころか全部めちゃくちゃにしてばっかりだ」
この男の子、噂の新入生かしら?
あっちこっちで魔力を暴走させては、色んなものを壊したり、時には巻き添えで生徒が怪我をするケースもあるとか。
「あなたはもしかして、エスティリオ君?」
「……そう。お姉さんも俺の事知ってるんだ」
「ええ、有名だもの。魔力量が尋常ではないって、先生たちも驚いてらっしゃったわ。魔塔アカデミーの先生方が驚くくらいだから、相当なんでしょうね」
とんでもない子が現れたと、生徒のみならず教員達の間でも話題に上がっていたくらいだ。ラシェルも名前を何度も耳にしていたので知っている。
「さあ、片付けなくちゃ。私も髪の毛ボサボサよ。あっ、あなたも髪の毛に葉っぱが付いちゃってるわ」
髪に付いた葉を取ってあげると、エスティリオが不安げに聞いてきた。
「……お姉さんは俺の事、怖くないの?」
「なぜ?」
「同級生は俺に近づくの怖いってさ。多分魔力が強すぎるから。先生は魔力を上手くコントロール出来るようになれば抑えられるし、怖がられることも無くなるだろうって言ってたけど」
「うふふ、言ったでしょう? 私、魔力がないの。だから人の魔力も感じられないわ。あぁ、でもそうね。全くという訳では無いかしら。何となくだけど、あなたからは何かしら、凄い力を持っていそうな気配くらいは感じるもの」
散らかった道具を拾いながらラシェルは、「そうだ」と思い出した。
「そういえばまだ自己紹介していなかったわね。私はラシェルって言うの。6年生よ。自分で言うのもなんだけれど、私凄く優秀なの」
「優秀? こんなところで土いじりしてるのに?」
「そっ、薬草作りの天才。あとはそうね、地理や経済学に算術でしょう? それからダンスや音楽、マナーの授業も得意だし、お裁縫に乗馬も成績がいいのよ」
男性なら剣や弓などの武術、女性なら裁縫やお茶の入れ方などの授業もある。
凄いでしょ? と笑いかけると、エスティリオはひと言呟き返した。
「でも魔力はないんだ」
「そうなのよ」