呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「……私が2年生だった頃かしら。魔塔主のライエ様がアカデミーにいらっしゃったことがあって、私が今みたいに薬草の手入れをしている所に通りかかったのよ。そうしたらね、いい仕事をしているって褒めてくださったの。魔法を使えるとつい、魔法に頼って雑になったり疎かにしてしまいがちだけれど、貴女の仕事は丁寧できめ細かい。育てている薬草を見ればよく分かるって」
「生き物が相手だと、魔力でどうにもならないから?」

 植物や動物の量を増やしたり、成長を早くしたりなどという、都合のいい魔法など存在しない。一つ一つ丁寧に、生き物の様子を見ながら手間隙かけなければ結果が出ない。
 ラシェルは魔法が使えない分、人より手間ひまを惜しむことなく作業をこなせる。
 先程のアブラムシ退治がいい例だ。
 魔法を使えるとどうしてもその力に頼って、ミルクをかければそれでいいと思ってしまうが、実際にはアブラムシが付いているところを狙ってかけた方が良い。もちろんアブラムシをピンポイントで狙ってかけるなんていう魔法が使えれば別だが、そんな魔法があったとしても難しすぎて誰でも習得出来る類のものではないだろう。
 「そうよ」とラシェルはエスティリオに頷くと、改めて自分の考えを整理するように話しを続けた。

「魔力無しの私だからこそ出来ること。私が出来ないことは他の誰かにやって貰えばいいし、誰かが出来ないことが私に出来るなら、私がやればいい。それだけの事よ。嘆く必要なんてないの。だからね、エスティリオ君。私はあなたが沢山持って生まれたのなら、沢山持って生まれたなりに生きていけばいいと思う。私はその代わり、あなたが出来ないことをやるから」

 お互いに無いものは補い合えばいいし、あるなら出し合えばいい。
 ただどうしても人間は、自分より誰かを見下して優位に立ちたいと思ったり、見栄を張ったり、面倒だと怠けたり……。
 ラシェルの考えはただの理想論だとは分かっているが、少なくともラシェル自身は、持っているものは惜しみなく全て出そうと思っている。
 
「という事だから、良ければ私が魔法以外のお勉強は教えてあげましょうか? さっきも言ったけれど魔法以外は私、凄く出来が良いのよ。それが今、私があなたに出来ること」
 
「もちろん嫌なら無理にとは言わないわ」と付け加えると、エスティリオはブンブンと頭を振った。
 
「嫌なわけない。教えて欲しい……いえ、教えてください」

 それがラシェルとエスティリオとの出会いだった。
 
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