呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

 卒業証書を授与された時点で、入学時の魔法誓約の効力は消えている。ラシェルはファーストネーム以外の名と身分を明かせるが、エスティリオはまだ在学中。彼が必死になって自分の名前は『エスティリオ』だと訴えたのは恐らく、名前が『エスティリオ』しかないと言いたかったから。つまり、ファーストネームしかない平民の出であると。
 入学当初からの立ち振る舞いや話し方から、そうではないかと思っていたので、ラシェルは意味が分かったと頷き返した。

「私の名前はね、ラシェル・デルヴァンクール。カレバメリア帝国の第5皇女なの。でも以前話した通り、魔力無しの私は父から……皇帝陛下から疎んじられているから……」

 連絡はしないで欲しい。とはどうしても言えなかった。いや、言いたくなかった。
 ラシェルはアカデミーに通う前、卒業時に絶対に誰にも身分を明かすなと、皇帝に釘を刺された。卒業する時に、仲の良かった相手にはフルネームと身分を明かし合うのが慣例となっているから。
 エスティリオに教えてしまったことが万が一皇帝に知られてしまうと、困ったことになるのは目に見えている。
 だから手紙などの連絡はしないで欲しいと言うべきだったが、あとの言葉が続かなかった。 
 エスティリオとの縁をここで終わりにするには、あまりにも辛く悲しい。
 
 本音を言えば、皇宮には戻らず自由に暮らしたい。
 だがラシェルが実行に移せば、皇宮に残してきた母はどうなってしまうのか。一人寂しく、あの宮で暮らさせるだけでは済まないかもしれない。もしも戻らないラシェルの代わりに罰を受けたら……。
 
 言葉に詰まったラシェルの手を、エスティリオが握りしめてきた。
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