呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「俺の事、忘れないで」
「忘れない。忘れられるわけがないでしょう? 元気でね」

 アカデミーと、そしてエスティリオと別れを告げて皇宮に戻ってきたラシェルはやはり、居ないものとして扱われた。
 アカデミーでどれだけ優秀な成績を納めようと、皇帝にとってラシェルは生まれてきて欲しくなかった存在なのは変わらない。

 ラシェルが成人し、淑女となって戻ってきたことを唯一喜んでくれた母は、20歳になる年に亡くなった。

「あなたを産んで後悔したことなんて、一度もないの。だから胸を張って生きていきなさい。私の可愛いラシェル。私の為に戻ってきてくれてありがとう。これからはあなたの好きなように生きるのよ」

 魔力無しの子を産んだことで冷遇されてきた母は、嫌味のひとつも言うことなく、亡くなる寸前までラシェルに愛を注いでくれた。
 だからこそ自分の地位や身分全てを捨てることなど、惜しいとは思わないし未練もない。たとえ今より厳しい生活が待っていようと、自分を誇れるように生きていきたいから。
 
 皇宮を出、旅費を稼ぎながら旅をし辿り着いた魔塔。
 エスティリオが途方もない魔力を持つ人だとは知ってはいたけれど、まさか新しい魔塔主となって再会するとは思ってもみなかった。
 
 平民から魔塔主という比類ない存在になった彼に比べて、ラシェルは皇女から平民となり、容姿も名も変わった上に、おまけに呪いにまでかけられている。
 あまりにも自分とは正反対な道を辿ったことが可笑しくて、なんだか笑えてしまう。
 それは別に自嘲しているのではなく、単純に、人生何が起こるか分からないものだという面白さからだ。

 貝殻を叩く手を止めたラシェルは、隣の部屋にある薬草置き場へ行くと、袋を2つ持ってきた。
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