呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

 魔塔アカデミーは素質さえあれば、身分に関係なく誰にでも門戸を開くと言っているが、実際のところは生徒はほぼ間違いなく貴族や王族で締められている。入学試験をパス出来る程に教養を身に付けるのは、平民では難しいからだ。
 ラシェルもどこかの国の貴族か王族の令嬢だと予想はしていたが、この大陸一の強国と言われるカレバメリア帝国の皇女だったとは。

 別れ際、ラシェルは連絡しないで欲しいとは言ってこなかったが、父親との関係を聞いていたエスティリオは手紙を送ることはしなかった。
 一刻も早く魔塔主になって、堂々とラシェルを迎えに行く。
 魔塔主からの縁談の申し込みを、皇帝も無下には出来ないだろうから。
 厄介払いにラシェルが結婚させられる前に早く、と残りの在学期間は寝る間も惜しんで研鑽を積んだ甲斐あって、ライエはエスティリオを次期魔塔主候補に選んだ。他にもいた魔塔主候補を押し退け、見事その座を手にしようとしていたエスティリオは、魔塔で働くラシェルの存在を知る事となった。

 エルがラシェルである事を、エスティリオに隠し続けるのは何故なのか。
 聡明な彼女のことだから、相応の理由があるはず。
 理由も分からないまま、エルの正体がラシェルだと分かっていると明かしてしまえば、何か取り返しのつかないことになりそうな気がする。
 魔塔から逃げ出すくらいならまだいい。これがある限りどこまでも追って行けるから。とロケットペンダントに入ったラシェルの髪の毛を見る。貝殻肥料を作っている時に、ラシェルの肩に付いていた髪を拝借したものだ。
 爪の先や髪の毛など何でもいい。対象の体の一部を持っていれば、その人の所へ魔法で転移できる。
 転移できる距離は術者の能力次第なので、あまりに遠く離れた場所だと無理な事もあるが、その点においてエスティリオは心配ない。
 試したことは無いが、大陸の外へ出たとしても追って行けるだろう。
 だからラシェルが山賊に襲われた時も、タイミングは偶然だったが居合わせることが出来た。
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