呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
『ラシェルなら今日は休みですよ』
いつものように農場へ来たエスティリオに、仕事仲間のアルベラが言った。
ラシェルの事だから、休みの日でも書庫へ行って調べ物でもしているに違いない。休日に街へ出て、ショッピングやお茶を楽しむ人ではなかったから。
ラシェルを探しに行こうとすると、女性は更に続けて言った。
『今日は魔塔の外へ出掛けていると思います。彼女、いつもまとまった休みが取れると、野草の調査に山や川へ行くので』
『それって1人で?』
『ええ、そうですよ』
『護衛も連れずに?』
『ははっ、当然ですよ。どこかの要人や貴族でもあるまいし。使用人の私たちに魔塔騎士が護衛に付くはずがありませんから。それに、ラシェルに市井の護衛を雇う金なんて、ありはしませんよ』
聞くまでもなく当然のこと。
エスティリオにとってエルは特別な存在だが、エルは世間一般でいうとただの雇われ農民だ。魔塔の騎士を連れて行けるはずもない。
しまったと思った。
これまでの5年間に何も無かったとしても、今日、何も起こらないとは限らない。
不安を覚えたエスティリオがラシェルの髪の毛を頼りに転移すると、嫌な予感は的中し、山賊に襲われているところだった。
あと一歩遅かったら、と思うとゾッとする。
ラシェルの身の安全も考えなければ。まずこれが第一だ。
ラシェルが頑なに正体を隠し続ける理由については、どうにかして探っていくしかない。あの微量な魔力のことも含めて。
エスティリオは既に温もりの無くなったベッドをもう一度見やると、出来る手は早めに打つべく寝室を後にした。