呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
官吏になったとはいえ、重役でも何でもないラシェルが魔塔主に会いたいと言っても、すんなりと通しては貰えないだろう。
もしかしたら、エスティリオがこれまでのように農場へ顔を出しに来るのを待った方が早いかもしれないが、いてもたってもいられなかった。
「今日付けで薬草栽培研究官となったエルと申します。魔塔主様に用があり参りました。お取次ぎ願えますでしょうか」
魔塔本館のエントランスホールに入ってすぐのところに、大きな扉がある。その扉の前に立つ衛兵の一人に声をかけると、すぐ近くの石板に指で文字を書き始めた。
「薬草栽培研究官のエル殿……」
役職名と名前とが青白く石板上に浮かび上がった。それを見た衛兵は「どうぞ」とドアの前へ来るように促してくる。
「お通りください」
「え……? 通ってもよろしいのですか」
「ええ。青く光ったのは通行許可が降りているということですから。不可ならば赤く光ります。ドアを開けると魔塔主様がいらっしゃる執務室へ続く廊下に出ますので」
「分かりました」
何も知らない者が魔塔の中へうっかり足を踏み入れると、生きて出られない。などという話は怖がらせて脅すための噂だと思っていたが、そうでも無いらしい。
きちんと手続きを踏まずにドアを開けたならどうなるのか。考えただけでも恐ろしい。
衛兵に言われた通りにドアを開け、足を一歩向こう側へと踏み入れると、目の前にはチョコレート色の扉がある。
ここが執務室の扉ね。
先程の扉と同じように側には衛兵が立っている。名前を名乗り取り次ぎをお願いすると、直ぐに扉を開けてくれた。