呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!

「魔塔主様のお時間をこれ以上、いただく訳には参りませんから。それで……こちらをお返ししようと思いまして」

 ラシェルが紙袋から取り出したのは、以前エスティリオによって着替えさせられていた時のワンピース。洗濯をしておいたのを渡せないかと、ここへ来る前に取ってきたのだ。

「その節はありがとうございました」
「それは貸したんじゃなくてあげたんだよ」
「ですが、この様な上質な服をいただく訳には……」

 ワンピースと言っても、市井の娘が着るような質のものでは無い。スカート部分にはたっぷりと生地が使われて、フリルやリボンなどの装飾も多い。「はいそうですか、ありがとう」と気軽に貰うには、少々気が引ける。
 口ごもるラシェルに、エスティリオがテーブル越しにずいっと迫ってきた。
 ワンピースを持っている手にエスティリオの手が重ねられ、その顔の近さに狼狽えてしまう。
 
「あの……魔塔主様……」
「これはエルに着て欲しくて手に入れたものだから。急いでいたから吟味出来なかったのが心残りではあるんだけど、エルに似合うと思ったんだよね。気に入らなかった?」
「そうではなくて……」

 心臓の音がやけにうるさい。
 時が経てば経つほど、顔が熱くなってくる。
 
 これは返すのは諦めた方が良さそうね……。

「ありがたく頂戴致します」
「うん、そうして。もし要らなかったら売ってくれてもいいし」
「そんなことは絶対に致しません」

 エスティリオから貰ったものを売るだなんて、出来るはずがない。たとえエルという人にプレゼントしたものだとしても、ラシェルにとっての大事には変わりない。
 思いのほか力強く言葉が出てきて、エスティリオがキョトンとしている。 

「それではこれで、失礼させていただきます」

 これ以上、2人きりの空間は心臓に悪すぎるわ。

 ワンピースを胸に抱くと、ラシェルは逃げるように執務室から出ていった。 
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