呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
「まあとりあえず座ってくれ」
部屋の隅にある席を勧められて座ると、ラシェルは持ってきた書類を取り出す。
「薬草栽培研究における今後の予定を、こちらに書き記して参りました」
予定表と計画案をパラパラと捲って見てもらっている間にも、部屋では戦場のような光景が広がっている。
「くそぅ! まーた失敗した!」
「お前、貴重なマルガロンをいくつ無駄にしてんだよ。薬草採取の使用人が泣くぜ」
「うるせえ! お前だってクサリヘビの目玉が必要だって言って、採取係を泣かせてただろ」
クサリヘビの目玉……。魔法薬には薬草の他にも色んな材料を使うのね。
驚愕するラシェルの目に今度は、手から赤い血を滴らせている男性が映った。
「いってぇー! またブラッディミルトスの葉で切った」
「やだもぅ、血が魔法薬の中に入っちゃうじゃない。こっち来ないでよ」
ブラッディミルトスは魔法薬ではごく一般的な素材だが、葉っぱが鋭いためよく切れる。
食虫植物ならぬ小動物を食べるこの植物は、葉についている棘のようなセンサーに触れるといっせいにナイフのような葉が向けられて突き刺さり、そこから養分を取られてしまうのだ。
触れれば血を見る事になる。故にブラッディ。
センサーに触れずに葉をもぎ取る作業が難しく、使いにくいのだと聞いている。実際、ラシェルの手も何度か餌食になってしまったことがある。
無数のナイフで突き刺されたかのように、男性の手からはどくどくと血が流れ落ちている。
「大丈夫ですか? 宜しければこちらをどうぞ」
ラシェルが駆け寄りハンカチを差し出すと、男性は眉をひそめた。
「てめぇ、俺を馬鹿にしてんのか」
「え……」