呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
「困ったわね……」
こんな時に限って今夜は新月。
魔塔の周りならば防犯の為、多少の街灯があり明るいのだが、流石に森の脇を流れる小川や農場付近に明かりは無い。数メートル先までしか見えない中、進むしかない。
せっかく捕まえたエビの入ったビンを落としたりしたら大変だからと胸に抱き、役に立たなくなったランタンを手にして歩く。
もう少しで研究所だわ。
転ばないよう慎重に歩いていたせいで、かなりの時間を要してしまった。
疲労を押しながら研究所の小屋のドアを開けたラシェルは小さく悲鳴を上げて、文字通り固まった。
「きゃぁっ!!!」
どういう訳か、ドアを開けた瞬間に身体が動かなくなった。
何が起こっているのか。
恐怖に襲われながらもまだ自由の効く瞳を動かすと、小屋の中に人影があることに気が付いた。
「エル……?」
「魔塔主……様?」
近付いてきてラシェルの姿を確認したエスティリオが「ごめん!」と慌てた様子で呪文を唱えた。すると、先程まで氷漬けされたかのように全く動かなかった身体の拘束が解けていく。