呪われた皇女ですが、年下ワンコ系魔塔主様に迫られてます!
「ここでしっかり糖分取ったら、あとの仕事も捗りそうなんだけどなぁ」
「またそんな子供みたいなことをおっしゃって」
「この後誰かと会う予定でもあったっけ?」
「ありませんが、明日までに目を通して欲しい書類が山積みですよ」
「それでは30分だけ。時間になったら必ず店から出るとお約束します。それでいかがでしょうか」
アルノートはラシェルの妥協案に感心したように目を見開くと、「分かりました」と了承した。
「ベクレル様が目をお掛けになるのも分かる気がします」
「ニヤニヤするな。気持ち悪い」
「それではエルさん、また後ほど」
「はい」
邪魔者が居なくなったところでラシェルをケーキ屋に案内して、席についた。
美味しいと評判なだけあって満席だったが、30分しか時間は取れない。ここは自分の身分を利用させて貰うと、すぐに席に案内して貰えた。早速メニュー表を眺めながらラシェルに尋ねる。
「エルは何にする?」
「ええと、そうですね……私は」
「あっ、ちょっと待った」
「?」
「エルが選んだケーキが何か、俺が当ててみせよう」
「ふふっ、分かるのですか?」
「多分ね。言おうとしたのは『ミックスベリータルト』。どう、合ってる?」
ラシェルとは在学中にマナーの勉強と称して、幾度もティータイムを楽しんだ。
ふわふわとした食感のスポンジケーキよりも、サクッとしたタルトを。濃厚なチョコレートよりもフルーツを。中でもベリー系のフルーツをよく好んで食べていた。
もう一つのストロベリータルトと迷ったが、ラシェルの好みが変わっていなければきっと、ミックスベリーを選ぶはず。
期待を込めて見つめると、「当たりです」と呟いた。本当に驚いたような顔をしているので、気を使って正解と言っている訳ではなさそうだ。
店員に同じケーキを2つと、ケーキに合うお茶を用意するよう注文すると、ラシェルが小首を傾げる。
「なぜ私があのケーキを選ぶと思ったのですか?」
「なぜだと思う?」
「分かりません」
「簡単だよ。魔法で心を読んだだけ」
「魔法で……心を……?」
遊びで気軽に返したつもりが、思いの外ラシェルが動揺している。顔からスっと血の気が引き、指先が小さく震えたのを見逃さなかった。