聖女、令嬢、普通の子

 ファーン王子とハルオトの後をついていく。
 大きな木の木陰で涼しそうな場所のそばに治療室があった。

 「コイツが起きるまで付き添ってやれ」
 「ええっ~~⁉」
 「なんだ、不服か?」
 「なんで私だけ」

 ハルオトをベッドに寝かせたファーン王子が私に命令したが、思わずイヤな顔をしてしまい、睨まれた。

 「では、俺がコイツを看病しろと?」
 「いえいえ、ここは公平にジャンケンで決めましょう」
 「ジャンケン?」

 ジャンケンという仕組みを知らないらしい。
 やり方を説明したところ、意外にも食い付いてきた。

 「最初はグー。ジャンケン、チョキ。やったー⁉」
 「──なっ! お前、今、ズルしただろ? もう1回だ」
 「ダメです。ふざけてるんですか? 勝負にリトライなぞ存在しません」
 「ぐっ……」

 よし、勝った。
 くやしがる王子にハルオトを任せて、寮へと戻った。


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