【受賞&書籍化】国外追放された箱詰め聖女が隣国で子育てしながら満腹&幸せになるまで
「ローズマリー、無理をしなくていい」

「……どういう意味でしょうか?」


ローズマリーはリオネルの言葉に首を傾げた。


「君は君らしくしていいんだ。そのままでいい」

「……!」

「ローズマリーの考え方が素敵だと僕は思う。これからも君が本当に思ったことを僕に言って欲しい」


リオネルはローズマリーの手を取り、笑顔でそう言った。
彼の言葉が手のひらから伝わる熱と共にじんわりと心に沁みていく。
孤児院の頃から変わり者だと言われて、大聖堂でも拒絶され続けていたローズマリーにとっては驚きだった。

(……そんなことを言われたのは初めてです。リオネル殿下はとても心が広い方です。お優しいのですね)

〝そのままでいい〟
そう言ってくれたことが何よりも嬉しかった。


「リオネル殿下、ありがとうございます。わたしは……とても嬉しいです」

「……!」


ローズマリーは無意識に笑みを浮かべていた。
リオネルのそばにいると心がふわりと軽くなる。
次第にリオネルの頬はほんのりと色づいていく。だけどその理由がわからない。
首を傾げたローズマリーの表情は戻る。

(熱があるわけではなさそうですが……リオネル殿下はどうしたのでしょうか)

リオネルはローズマリーの視線に気がついたのか、そっと顔を逸らしてしまう。
手を握ったままローズマリーはしばらく考えていた。
そしてある考えに行き着く。
ローズマリーは辺りを見回して、リオネルの手を引いて歩き出す。


「ローズマリー、一体どこに……?」

「リオネル殿下、ここを見てください」


ローズマリーの指差す場所、そこは花が生えてはおらず雑草が生い茂っている。
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