【受賞&書籍化】国外追放された箱詰め聖女が隣国で子育てしながら満腹&幸せになるまで
そして十年前、カールナルド王国の魔法樹に寄り添っていた聖女も緑の聖女だった。
光の聖女でも魔法樹は癒せるが、緑の聖女は魔法樹の声を聞くという伝承も残されていた。

それがローズマリーが聖女だという何よりの証拠となった。

彼女はひどく混乱しているようで、ここがカールナルド王国だということすらわからないようだ。
それから地鳴りのような音が聞こえた。
それはローズマリーの空腹を知らせる腹の音だった。

倒れそうになるローズマリーを支えると、リオネルの顔を食べ物と間違えたようで唇が頬に触れた。
そのままローズマリーは気を失った。

衝撃的な出会いだった。
リオネルは顔色の悪いローズマリーを見つめたまま動けずにいた。
それには父や周りにいた大臣たちも驚きから言葉を失っている。


「ま、まさか聖女が箱詰めされているなど……信じられません」

「ああ、バルガルド王国は何を考えている? 世界の宝である魔法樹と聖女にこのような扱いをするなど、正気の沙汰ではない」

「バルガルド王家はもっとも力の強い魔法樹が人型を模して生まれてくることを知らないのでしょう。幸いこの聖女が魔法樹を体を呈して守った……自らがこのようになるまで守り抜いたんです」
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