諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
 まるで子守歌のようにそれは咲良の鼓膜にやさしく残響を届けてくれた。
「やっと、君と一緒になれるんだな」
「……はい」
 そう、大丈夫。ずっと彼が側にいてくれる。
 私ももう二度とあなたから離れたりしない。
 これから先もずっと――。


***


 腕の中に抱いた咲良のやわらかな温もりに、これまでにない安堵感を抱き、恭平もまたうとうととする。
 今までどれほど仕事で疲れていても、日本に残してきた咲良との別れという後悔が、夜を迎えるたびに襲ってきて恭平を苦しませていた。だが、今夜は久方ぶりに悪夢にうなされないで眠れる気がした。
 それでも……眠ってしまうのが勿体ないと感じる。
 腕枕をしていたその腕が少しだけ痺れていた。位置をずらしてから恭平は咲良をまたそっと抱き寄せた。
「……恭平さん。もう寝てしまいましたか?」
「ん、起きてるよ」
 何かあったんだろうか、と瞼を開く。恵茉が目を覚ましてしまったとか。そんなふうに夢現にも感じていると、咲良が額を擦りつけてくる。
「君こそ、もう眠ってしまったのかと思った。もしかして今ので起こしてしまったか?」
「いえ。寝落ちそうだったんですが、なんとなく眠ってしまったら夢になってしまいそうで……そしたらハッとしてしまったんです」
 そう言いながら、もぞもぞと咲良が動き出す。
「なら、もっと深く眠れるように、俺が君に痕をつけてあげようか」
 一度目も二度目も激しく愛し合ったのに。
 そんな目で咲良が恭平を見上げてくる。戸惑う彼女が可愛くて仕方ない。
「……恭平さんは、お疲れではっ」
「まさか。まだまだ足りないくらいだ。どれほど君に飢えた月日があったと思う?」
 許されるのならどれほどまででも求めていたい。無限にこのまま閉じ込めてしまいたいくらいだ。彼女が自分を受け入れてくれたことが嬉しくて、恭平はそんな心境の中にあった。
 夢じゃない現実なのだと感じていたいのは恭平も同じだった。飢餓感がそう簡単には消えない。きっかけさえあれば、何度だってあっけなく導火線に火はつけられる。
「……恭平さんっ」
 甘い声。自分を呼んでくれるその声が愛しい。
 「もっと聴きたい。咲良、愛してる」
 何度だって伝えられる相手がいるこのときに、声を届けたい。互いの熱をひたすら交わらせ、激しい奔流へと誘っていく。
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