諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
 何度も果てを見送っている間に、ひとつの夜は既に終焉のときを迎えようとしていた。朝陽の光がカーテンの裏側を明るく染めていくのが見えた。
 二人は汗ばんだ肌を冷えないように寄せ合い、名残り惜しい夜の営みの分だけ唇を求め合った。
「朝が……きてしまったな」
「眠らないまま朝を迎えるなんて……」
 自分たちがどれほど愛に耽っていたか思い知らされるようだ。
 咲良は恥じるように瞳を潤ませていたが。恭平にとってはただ眠れないだけの夜を見送るよりずっとよかった。
「少しでも眠るといい。せめて恵茉が目を覚ますまでは」
「……恭平さんは」
「俺はすっかり眠気が去ったよ。仕事に行くまでに少し目を覚ましておかないとな」
「ご……」
「こら。ごめんなさい、とは言うなよ。俺がしたかった。君とこうすることを望んでいたんだから。君だってそうだろ?」
「うっ……おっしゃるとおりですが」
 恥らっている咲良を見て、恭平は笑った。
「心配しなくても体力はある方だ」
 実際、体力作りと称した筋力トレーニングやランニングは日々消化している。
 夜通し彼女を愛せるだけの体力、という意味だけではなかったのだが、咲良はますます羞恥を煽られたらしく耳まで赤くしている。そんないつまでも初々しい彼女が可愛くて。一日も早く彼女を妻にしたいという気持ちが昂ぶってくるのを感じる。
 恭平は咲良をシーツごと包んで頬にキスをすると、ベッドから立ち上がった。
「シャワーを浴びてくるよ」
「あの、私もやっぱり起きます。朝食を作ってもいいですか?」
「それはもちろんだ。じゃあ、どうせなら一緒に入るか?」
 爽やかに誘ったつもりの恭平だが、悪戯っぽい雰囲気を感じ取ったらしい。なにやら咲良の中で大胆な妄想が弾けたようだ。彼女の頬が林檎のように真っ赤になっている。
「そ、それは、あの」
「もちろん自重するよ。バスルームじゃあ、恵茉の様子もすぐにわからないし、心配だろう」
「そうですよ! さ、先に行ってください。私は後でいいですから」
「わかった。じゃあ……俺は終わったらコーヒーでも淹れようか」
 あわあわしている咲良を尻目に、恭平は笑ってそのままバスルームへと向かった。些細なやりとりさえ今は小さな幸せの積み重ねのように思えて愛しい。
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