諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
「だから知らないと――」
カップルが反論するよりも先に、咲良が話を繋げた。
「大事な本なんです。あなたにとってはどうでもいいことかもしれませんが……!」
咲良の気迫に押されたらしい。渋々といったふうにその人物は紙袋の中身を確認した。
「もう、これでいいですか?」
カップルの女性が渋々といったふうに雑に開く。するとカップルの男性の方が目を丸くした。
「あれ。たしかに本が入ってる。それに、君の買った時計が入っていないじゃないか」
男性に指摘されて女性は慌てて中を覗き見た。
「ええ? あら。このストールは私のじゃないわ。じゃあ間違いだっていうの?」
そんなやりとりを見ていた咲良は、じっと二人の様子を窺う。彼らは申し訳なさそうに表情を変えた。
「返していただけますよね?」
「じゃあ、私たちの荷物はどこに……」
「あちらの方が困っておいでです。間違えてもって行かれたのでしょう」
咲良は振り仰ぐ。
係の男性と一緒にいた和葉が困惑した顔をしたままため息をついている。そこに連れて行くと和葉は驚いた顔をしていた。
「あなたたち……」
言葉を失っていた和葉に事情を説明する。
「悪かったわね」
「気をつけるよ」
カップルはきまり悪そうに謝ると、自分たちの荷物を確認しそそくさと帰って行った。
「謝ってくれたし、取り戻せたし、これで万事解決ですね」
咲良が胸を張ると、
「名探偵だな」
と、恭平が言い添えた。
「お母様、返してもらえてよかったですね。よかった。ちょうど同じような詩集を持っていて。さすが親子です。恭平さんと好みが似ていますね。もちろん、私ともです」
「なんだかあなた、こうして見ると、昔とずいぶん雰囲気が違うわね」
「そうでしょうか?」
「え、ええ」
咲良が興奮気味だったからか和葉はやや引いてはいるものの素直に受取ってくれた。
それを見てホッとした咲良は恭平の方に笑顔を向けた。
「恭平さん、ありがとうございます」
「いや、君の独壇場だろう。俺は何もしていないんだが。君が急に前に行くから、すっかり出遅れたよ」
恭平はそう言って苦笑する。
「ふふ。過去の経験が役に立ったんです」
咲良は頬を緩ませる。あの恭平との大使館パーティーでのことを思い出していると、恭平にもどうやら伝わったらしかった。
「ほん、だいじ」
カップルが反論するよりも先に、咲良が話を繋げた。
「大事な本なんです。あなたにとってはどうでもいいことかもしれませんが……!」
咲良の気迫に押されたらしい。渋々といったふうにその人物は紙袋の中身を確認した。
「もう、これでいいですか?」
カップルの女性が渋々といったふうに雑に開く。するとカップルの男性の方が目を丸くした。
「あれ。たしかに本が入ってる。それに、君の買った時計が入っていないじゃないか」
男性に指摘されて女性は慌てて中を覗き見た。
「ええ? あら。このストールは私のじゃないわ。じゃあ間違いだっていうの?」
そんなやりとりを見ていた咲良は、じっと二人の様子を窺う。彼らは申し訳なさそうに表情を変えた。
「返していただけますよね?」
「じゃあ、私たちの荷物はどこに……」
「あちらの方が困っておいでです。間違えてもって行かれたのでしょう」
咲良は振り仰ぐ。
係の男性と一緒にいた和葉が困惑した顔をしたままため息をついている。そこに連れて行くと和葉は驚いた顔をしていた。
「あなたたち……」
言葉を失っていた和葉に事情を説明する。
「悪かったわね」
「気をつけるよ」
カップルはきまり悪そうに謝ると、自分たちの荷物を確認しそそくさと帰って行った。
「謝ってくれたし、取り戻せたし、これで万事解決ですね」
咲良が胸を張ると、
「名探偵だな」
と、恭平が言い添えた。
「お母様、返してもらえてよかったですね。よかった。ちょうど同じような詩集を持っていて。さすが親子です。恭平さんと好みが似ていますね。もちろん、私ともです」
「なんだかあなた、こうして見ると、昔とずいぶん雰囲気が違うわね」
「そうでしょうか?」
「え、ええ」
咲良が興奮気味だったからか和葉はやや引いてはいるものの素直に受取ってくれた。
それを見てホッとした咲良は恭平の方に笑顔を向けた。
「恭平さん、ありがとうございます」
「いや、君の独壇場だろう。俺は何もしていないんだが。君が急に前に行くから、すっかり出遅れたよ」
恭平はそう言って苦笑する。
「ふふ。過去の経験が役に立ったんです」
咲良は頬を緩ませる。あの恭平との大使館パーティーでのことを思い出していると、恭平にもどうやら伝わったらしかった。
「ほん、だいじ」