諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
恵茉が和葉に差し出した。誇らしげに胸を張る恵茉の様子は、咲良を真似しているみたいだった。
「……ありがとう」
和葉はきまりわるそうな顔をし、受取るのを躊躇ったあと詩集に目を落とす。それから一旦受け取ってから恵茉にどうぞ、と逆に渡してきた。
「それは、差し上げるわ」
「え?」
恵茉がきょとんとし、咲良が首を傾げる。
側にいた恭平が閃いたように言った。
「ひょっとして恵茉に買ってくれたものだったんじゃ」
「恭平、無粋なことはいいのよ」
と、和葉がしっと声を潜め、恭平を睨む。どうやら恭平のいうとおりだったようだ。
「お母様、よろしいんですか」
戸惑いながら声をかけると、和葉はわずらわしそうな顔をする。
「いいと言っているでしょう」
「母さんこそ、仕切り直した方がいいんじゃないか。そういう特別な行動をするときは」
「助けてくれた御礼よ。それなら構わないでしょう」
素直じゃないな、と恭平がやや呆れた表情を浮かべていたが、それでも和葉が譲歩してくれたことには違いないだろう。やっと彼女が自分の内側の扉を開こうとしてくれているのだ。
(私も頑固だと言われることはあるけれど……)
和葉も歩み寄ろうと考えてくれたのだろう。その気持ちが何より嬉しかった。
咲良はふっと表情を緩め、それから恵茉が抱きしめていた詩集の本を目にし、改めて和葉に向き直った。
「何? まだ何か言いたいことでもあるの?」
「はい。私にとって本は、いつも側にありました。生まれてから一度も顔も知らない父が遺してくれたもの。幼い頃に母がくれたもの。祖父母が恵茉に読み聞かせてくれたもの。そして、恭平さんと私を出会わせてくれたもの。どれも、私と私の大切な人たちを繋いでくれていた。大事な縁結びをしてくれるものです」
「それがなんだというの」
「今日、お母様とも縁を繋いでくれたんだと思うと嬉しくて。きっと、私たち縁があるんです。ちゃんと」
「……あたりまえじゃない。あなたはともかく……恵茉は、私の孫でしょう」
和葉のそういう表情には照れ隠しの色が見えた。
咲良は恭平と顔を見合わせて肩を竦める。
幼いながら察しのいい恵茉は、ピンと閃いたように和葉をじっと見た。それから恭平の腕からおりると主張し、和葉の前へと行く。
「なぁに。あなたまで何か言いたいの? 恵茉」
「ばあば、いっちょ」
「……ありがとう」
和葉はきまりわるそうな顔をし、受取るのを躊躇ったあと詩集に目を落とす。それから一旦受け取ってから恵茉にどうぞ、と逆に渡してきた。
「それは、差し上げるわ」
「え?」
恵茉がきょとんとし、咲良が首を傾げる。
側にいた恭平が閃いたように言った。
「ひょっとして恵茉に買ってくれたものだったんじゃ」
「恭平、無粋なことはいいのよ」
と、和葉がしっと声を潜め、恭平を睨む。どうやら恭平のいうとおりだったようだ。
「お母様、よろしいんですか」
戸惑いながら声をかけると、和葉はわずらわしそうな顔をする。
「いいと言っているでしょう」
「母さんこそ、仕切り直した方がいいんじゃないか。そういう特別な行動をするときは」
「助けてくれた御礼よ。それなら構わないでしょう」
素直じゃないな、と恭平がやや呆れた表情を浮かべていたが、それでも和葉が譲歩してくれたことには違いないだろう。やっと彼女が自分の内側の扉を開こうとしてくれているのだ。
(私も頑固だと言われることはあるけれど……)
和葉も歩み寄ろうと考えてくれたのだろう。その気持ちが何より嬉しかった。
咲良はふっと表情を緩め、それから恵茉が抱きしめていた詩集の本を目にし、改めて和葉に向き直った。
「何? まだ何か言いたいことでもあるの?」
「はい。私にとって本は、いつも側にありました。生まれてから一度も顔も知らない父が遺してくれたもの。幼い頃に母がくれたもの。祖父母が恵茉に読み聞かせてくれたもの。そして、恭平さんと私を出会わせてくれたもの。どれも、私と私の大切な人たちを繋いでくれていた。大事な縁結びをしてくれるものです」
「それがなんだというの」
「今日、お母様とも縁を繋いでくれたんだと思うと嬉しくて。きっと、私たち縁があるんです。ちゃんと」
「……あたりまえじゃない。あなたはともかく……恵茉は、私の孫でしょう」
和葉のそういう表情には照れ隠しの色が見えた。
咲良は恭平と顔を見合わせて肩を竦める。
幼いながら察しのいい恵茉は、ピンと閃いたように和葉をじっと見た。それから恭平の腕からおりると主張し、和葉の前へと行く。
「なぁに。あなたまで何か言いたいの? 恵茉」
「ばあば、いっちょ」