諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
 その証拠に、祭壇で待つ恭平の姿に、咲良はまた新たに恋をするような気持ちを抱いていた。
 列席者の先頭あたりには小さなプリンセスが花籠を持って待機しているのが見え、咲良は思わず微笑んだ。同じように恭平も彼女を見て柔らかな表情を浮かべている。
 まもなく五歳を迎える彼女――二人の大事な娘、恵茉だ。
 これから先、きっと恵茉も大事な人に出会う。その未来を恭平の側で、彼と一緒に見守っていきたいと願う。
 恵茉の側には、さっき噂をしていた千年は生きると言っていた勝気な祖母が大粒の涙を滲ませていた。後ろには若い仲居たちや板前の姿もあった。そして通訳の会社でお世話になった先輩たちもいる。
 皆がお祝いのために駆けつけてくれたのだ。すべて咲良の人生に関わってくれた素敵な人たちだ。
 その光景には、咲良の胸にまた迫るものがあった。
 人と深く関わり合うことがあまり得意ではなかった咲良の人生が豊かに彩られたのもみんなが居てくれたからだ。
 新郎側の参列者の席には、嗣利と和葉が揃っている。一時は色々と分かり合えないこともあった義母も、その隣にいる義父も今では頼とてもりになる家族だ。
 考え方の違う人たちでも、愛する人を想う気持ちはそれぞれ胸の中に在るのだと今ならちゃんとわかる。
 いよいよ祖父が恭平に咲良を託すと、恭平は咲良を見つめた。目を細めるようにして見つめてから微笑んだ。
 咲良は恭平の腕に掴まって、それから彼と共に祭壇の方を向いた。
 透けたステンドグラスから光が注ぎ込む。
 まるで天から降りてきた階段のようだ。
 すべてが目映く美しい、神聖な空気が漂う。
 様々な感情がこみ上げる中、式は進行していく。
 鼓動はどんどん高まっていくばかり。
 そして、とうとう二人の誓いの時がやってくる。
「汝――健やかなるときも……誓いますか?」
「誓います」
「……誓います」
 互いに粛々と今日の日を受けとめ、永遠の愛を誓い、指輪を交換し、口づけを交わす。
 あなたと出会えてよかった。
 あなたが夫でよかった。
 そんなふうに想いながら咲良は目を閉じて恭平の温もりを感じた。
 そっと目を開くと、恭平が近くで微笑んでいた。咲良も頬を緩ませた。
「ここに二人が結婚したことを証明いたします」
 わっと拍手と歓声が上がる。
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