諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
 二人の結婚が証人されると、咲良は恭平の腕に掴まって祭壇から扉の先にある鐘を鳴らすため、ヴァージンロードを歩き、列席者に挨拶をする。その先頭を歩くのはフラワーガールの恵茉だ。
 花籠から花びらを撒き、恵茉が二人の前を歩いていて花の道を作っていく。列席者の皆も恵茉にならって祝福のフラワーシャワーを二人に浴びせてくれた。
 二人で鐘を鳴らすと、外へと繋がるガーデンに皆が移動する。引き続き、恵茉に倣うように列席者が皆、色とりどりの祝福の花びらを撒いてくれた。
「おめでとう、咲良!」
「おめでとう」
「……二人とも幸せになってね」
「お幸せに!」
 やさしい人たちの笑顔に応じながら咲良は恭平と共にバージンロードの先にあるガーデンへと出ていく。
 外には日本らしい景色が見えてきて、ガーデンの先にある桜並木が風に揺れているのが見えてきた。
 桜の薄紅色に染まる風景を眺めると、ほのかに甘酸っぱいような気持ちがこみ上げてくる。
 いつもこの季節は、恭平との出会いを思い出すのだ。
 そのとき風が吹いて、桜の花びらが舞った。
 不意に、咲良の脳裏にある日のことが蘇ってきた。
 実家の旅館に恭平が迎えにきてくれた日のことだ。
 あのとき、最後に背を押してくれた言葉を――。
(いいの? 彼を二度失うことになっても)
 あれは自分の内側から出たものだと思っていたけれど、ひょっとしたら亡き母が背を押してくれたのかもしれなかった。
 今もきっと、見ていてくれる。
 風に背を押され、桜の花びらが舞う空へと、咲良は仰ぎ見る。空にいる亡き母からの祝福に違いないと。
(お母さん、ありがとう。あなたのぶんも絶対に幸せになってみせるわ。そして……お母さんが愛してくれたように、私も家族を愛していくから)
 そして夢も諦めない。
 彼が側にいてくれるなら叶えられる。
 そう信じている。
「何か願いごと?」
 隣にいる恭平が顔を覗き込んで、隙あらば唇を奪ってきた。皆のひやかすような声が聞こえて咲良はうろたえる。
「恭平さんったら」
 咲良は思わず恭平の胸を押し返した。
「新婚夫婦の特権だと思えばいい。誰も咎めないよ」
 誓いの神聖なキスとはまた別の甘い触れ合いに、咲良はちょっと照れてしまう。
 今日は一段と素敵でかっこいい。世界一、大好きな人に見惚れてドキドキしながら本心を彼に伝えた。
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