諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
「願いごとと言いますか、恭平さんが夫でよかったです。彼のことをすごく愛しています……って、そんなふうに母に報告していたんですよ」
「……そっか」
 恭平も一瞬だけ面食らったらしく照れている。それから咲良を側に引き寄せてもう一度、唇を近づけた。
「俺も。君が妻でよかった。ついてきてくれてありがとう。心から愛しているよ。これからも……」
 神様に誓ったあとは、互いに誓い合う。これから先の未来へと。
 そんなやりとりをしていたとき、咲良の中に数年前に体験した予感がふらっと眩暈と共に訪れた。
 そういえば、身に覚えがある気がする。忙しくて忘れていたけれど。身体がちょっと熱っぽいのも、緊張や興奮がそうさせているのかと思っていたが。
 胸のあたりに込み上げてくるものの正体はきっと。
 咲良はそう感じたら口にしないでは居られなくなってしまった。
「……あの、恭平さん。ひょっとしたら私……」
 咲良は恭平の耳の傍でその予感を告げる。
「もう一人、できたかもしれません」
 二人の愛する家族がこれからまた増える。
 興奮気味に報告する咲良に、恭平が少し驚いた顔をしたあと破顔をする。
「天からの贈り物だな。嬉しいよ」
 恭平のその表現の仕方に、咲良もまた嬉しくなって表情を綻ばせた。
「はい!」
 それから恭平にやさしく抱き寄せられると、また今までのことが蘇ってきて涙が溢れる。
 あのときには苦しい決断を迫られた。妊娠しているとわかった瞬間に喜びよりも何故という悲しみを突き付けられた。無論、授かった恵茉のことは大切で愛おしいが、消えない辛い過去は置いてきてしまった。
 だからこそ今度は二人で一緒に分かちあいたい。
もちろん恵茉も一緒に親子三人で、新しい命を迎えたい。
 そして、これから先も周りにいる大切な人たちとの縁を大事にしていきたいと、参列してくれた人々のことを想いながら、咲良は切に願ったのだった。



■エピローグ 貴方はこれからもマイヒーロー



 ――数年後。
 百川咲良……いえ、高宮咲良として、私は以前から目標としていたように、仕事に復帰していた。恵茉が中等部に上がり、下の子が小学校に入る頃だ。
 しかし会社に所属するのではなくフリーランスとして契約をし、通訳の仕事をしつつ外交官の彼の傍についてサポートする形をとっていた。
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