諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
恭平はそう言ってスーツの目立たない部分を示す。また彼に気を遣わせてしまったことに、咲良は肩を竦めた。
考え事をしているときは歩いてはいけない。そう戒めつつ咲良は彼に問うた。
「ひょっとしてこれから待ち合わせ場所に向かわれるところでしたか?」
「ああ、どうせなら君を迎えに行こうと思っていたところだ。ちょっと時間が早いけれど、せっかくだから寄り道をしながら今から向かってもいいかな?」
「はい。もちろんですが……寄り道とは?」
思い当たる節のない咲良は首を傾げた。
「君が好きそうな場所だよ。もちろん、俺も」
恭平は楽しそうに口の端を引き上げた。
だが、明確な回答はないままだ。咲良が疑問を抱いている間に、好奇心を刺激するようないたずらっぽい微笑みを向けてから、恭平は歩きはじめた。
咲良は気にはなったが、とりあえずは言及せずに彼に付き従っていく。
咲良よりも目線がだいたいニ十センチほど上くらい。すらっとした長身の彼のスーツ姿はやはり見栄えがよくて素敵だ。通り過ぎていく女性たちの視線が時々花に舞う蝶のように彼に吸い寄せられていくのだから、客観的にも彼はよほど見目がいいのだろう。
何事もスマートにこなす彼にはエリート外交官という言葉もまた彼のステータスの一つとしてとても似合っているように感じる。いくら色恋ごとに疎い咲良であっても一般的な感覚として、先輩たちが蕩けるような顔をしてもてはやす理由もわかる気がした。
しかし恭平に誘われる理由については今のところ皆目見当もつかない。知り合ったばかりの二人の共通点といえば、フランス大使館で行われたレセプションパーティーの最中に起きたトラブルとそれに関する通訳のこと或いは詩集のことくらいしかない。
(彼も本好きみたいだったし……)
しばし黙々と歩いた。恭平はあたりまえのように交通量の多い車道側を歩き、咲良を気にしてくれている。そんな彼の足取りは軽い。人通りが多いからということもあるが、彼は目的地に早く着きたいのかもしれないと咲良は思った。
けれど、けっして無理に行き急ぐのではなくて、隣にいる咲良が苦にならない歩調に合わせてくれているところが彼の紳士的な性格を示しているようだ。
考え事をしているときは歩いてはいけない。そう戒めつつ咲良は彼に問うた。
「ひょっとしてこれから待ち合わせ場所に向かわれるところでしたか?」
「ああ、どうせなら君を迎えに行こうと思っていたところだ。ちょっと時間が早いけれど、せっかくだから寄り道をしながら今から向かってもいいかな?」
「はい。もちろんですが……寄り道とは?」
思い当たる節のない咲良は首を傾げた。
「君が好きそうな場所だよ。もちろん、俺も」
恭平は楽しそうに口の端を引き上げた。
だが、明確な回答はないままだ。咲良が疑問を抱いている間に、好奇心を刺激するようないたずらっぽい微笑みを向けてから、恭平は歩きはじめた。
咲良は気にはなったが、とりあえずは言及せずに彼に付き従っていく。
咲良よりも目線がだいたいニ十センチほど上くらい。すらっとした長身の彼のスーツ姿はやはり見栄えがよくて素敵だ。通り過ぎていく女性たちの視線が時々花に舞う蝶のように彼に吸い寄せられていくのだから、客観的にも彼はよほど見目がいいのだろう。
何事もスマートにこなす彼にはエリート外交官という言葉もまた彼のステータスの一つとしてとても似合っているように感じる。いくら色恋ごとに疎い咲良であっても一般的な感覚として、先輩たちが蕩けるような顔をしてもてはやす理由もわかる気がした。
しかし恭平に誘われる理由については今のところ皆目見当もつかない。知り合ったばかりの二人の共通点といえば、フランス大使館で行われたレセプションパーティーの最中に起きたトラブルとそれに関する通訳のこと或いは詩集のことくらいしかない。
(彼も本好きみたいだったし……)
しばし黙々と歩いた。恭平はあたりまえのように交通量の多い車道側を歩き、咲良を気にしてくれている。そんな彼の足取りは軽い。人通りが多いからということもあるが、彼は目的地に早く着きたいのかもしれないと咲良は思った。
けれど、けっして無理に行き急ぐのではなくて、隣にいる咲良が苦にならない歩調に合わせてくれているところが彼の紳士的な性格を示しているようだ。