諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
「修繕や修復が必要なもの、読みにくくなった古いものがおさめられているらしい。狭いうえに何時間もいられる場所じゃないから事前にマスターに許可が必要なんだ。そこで限定二名の予約をとっておいた。入ってみないか?」
「行きます。ぜひ行かせてください」
「君ならそう言うんじゃないかと思ったよ」
地下に行くには梯子階段を降りなくてはいけないらしい。気を付けないと先ほどのファンデーションの非じゃないくらい汚れてしまいそうである。
床は歩くたびに軋んだ音を立てた。地下へと伸びている梯子もそんなに丈夫ではないように見える。それがまたアンティークっぽくていいのだが、少し頼りなさげだ。いきなり折れて落ちたりしないだろうか。
咲良の心中を察したのか、恭平が先導を切った。
「先に俺が行く。君はゆっくり降りてきていい。必要なら手を貸そう」
咲良は恭平の頼もしい提案に頷き返す。すると彼は微かに笑った。言及する前に彼はなんでもないよ、と一言告げて梯子階段を降りていく。成人男性の重みに耐えられるのならば大丈夫そうだ。ホッとして咲良はおそるおそるだが慎重に階段に足をかけたのだった。
到着するとそこはまた秘密基地のようだった。咲良はまたわくわくした。
どこかの一軒家の隠れ家あるいはワインセラーを改築したくらいの狭い室内に書架がぐるりと壁際に貼り付けられていて、各棚にはぎっしりと本が並んでいる。だが、隣同士が擦れただけでも破れそうな本の間は少しずつ歯抜けするように空いていた。
「だいぶ古い年代の本が多いんですね」
まさしく年代物のワインのように熟された本……手にとるのが躊躇われるくらいボロボロだ。捨てられてもおかしくないような姿かたちの本がこれだけ大切に保管されているのには意味がありそうだ。
「君は大学の専攻で古い言語学を学んだ?」
「はい」
「ここにある本は、昔の言語が多く使われている。今では使われなくなった言葉とか」
恭平の言葉に、咲良は即座に食いついた。
「フランス語やスペイン語などの欧州圏の言語の前身にあたるラテン語とかですか?」
「そうだね」
現在、ラテン語を公用語として採用している国はバチカン市国のみといわれている。失われたかつての文字を解読するのは骨のいることだが、謎解きをするようで面白かった。
「行きます。ぜひ行かせてください」
「君ならそう言うんじゃないかと思ったよ」
地下に行くには梯子階段を降りなくてはいけないらしい。気を付けないと先ほどのファンデーションの非じゃないくらい汚れてしまいそうである。
床は歩くたびに軋んだ音を立てた。地下へと伸びている梯子もそんなに丈夫ではないように見える。それがまたアンティークっぽくていいのだが、少し頼りなさげだ。いきなり折れて落ちたりしないだろうか。
咲良の心中を察したのか、恭平が先導を切った。
「先に俺が行く。君はゆっくり降りてきていい。必要なら手を貸そう」
咲良は恭平の頼もしい提案に頷き返す。すると彼は微かに笑った。言及する前に彼はなんでもないよ、と一言告げて梯子階段を降りていく。成人男性の重みに耐えられるのならば大丈夫そうだ。ホッとして咲良はおそるおそるだが慎重に階段に足をかけたのだった。
到着するとそこはまた秘密基地のようだった。咲良はまたわくわくした。
どこかの一軒家の隠れ家あるいはワインセラーを改築したくらいの狭い室内に書架がぐるりと壁際に貼り付けられていて、各棚にはぎっしりと本が並んでいる。だが、隣同士が擦れただけでも破れそうな本の間は少しずつ歯抜けするように空いていた。
「だいぶ古い年代の本が多いんですね」
まさしく年代物のワインのように熟された本……手にとるのが躊躇われるくらいボロボロだ。捨てられてもおかしくないような姿かたちの本がこれだけ大切に保管されているのには意味がありそうだ。
「君は大学の専攻で古い言語学を学んだ?」
「はい」
「ここにある本は、昔の言語が多く使われている。今では使われなくなった言葉とか」
恭平の言葉に、咲良は即座に食いついた。
「フランス語やスペイン語などの欧州圏の言語の前身にあたるラテン語とかですか?」
「そうだね」
現在、ラテン語を公用語として採用している国はバチカン市国のみといわれている。失われたかつての文字を解読するのは骨のいることだが、謎解きをするようで面白かった。