諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
策略的な表情を一瞬だけ浮かべた気がした。
だが、それは勘違いだったかもしれない。すぐに彼は柔らかく微笑んで「もちろん」と頷いたのだった。
■2章 結婚を意識した交際へ
霞が関にある外務省――別名、エリート集団の詰所。ここには日本と外国の架け橋となるべく活躍する人間が多く勤めている。例外なく、恭平もその一人だ。
大学に入りたての頃は父の背を追いかけるように外交官になることが憧れでもあったし、父と同じ職務を目指すことに抵抗はとくになかった。
職業柄、留学と海外勤務を繰り返し、ほとんどが海外での暮らしとなることにもなんら苦に感じることはなかった。
いずれ、何度目かの海外勤務を経験する内にどこかの国の大使館に勤め、事務官や書記官或いは通訳官などよりも上の立場……公使や大使となり、戻って来る頃には父のように上層部の官僚のひとりになっているかもしれない。正にあらかじめ敷かれたレールの上に自分の人生が在るといっても過言ではない。特段それに反発する気もない。
なぜなら、恭平は自分の仕事に誇りを持っているからだ。この仕事は恭平の知識欲を満たしてくれる。好奇心や探求心を刺激するものでもある。また、人との繋がりを持たせること、互いの異なる文化に理解を深めること、そして日本という国を理解してもらい相手の国を理解すること、その仲介役として結果を出すことにやりがいを感じているのだ。
だが、すべてうまくいく仕事などない。どうしても話が通じない相手というのは存在する。また、言葉を選ぶだけでは埋められない国同士の難しい溝や問題だってある。そんな業務が立て続けに起きたときには、さすがの恭平もネガティブな思考の海に身を預けたくなることもあった。
そういうときのためにメンタルケアの一環として、恭平は異国の詩集を読むことにしている。単純に物語の文章というよりもできたら行間に読み取れる自由がある詩文がいい。外国語の言葉のリズムを感じることで、不思議と思考がクリアになり心の整理がつくのだ。
そんなメンタルに不調の波が押し寄せるような激務が続いていた折に、起業家が集まる小規模なレセプションパーティーの場で、恭平はある人に出会った。昨年の十一月くらいの話だ。
だが、それは勘違いだったかもしれない。すぐに彼は柔らかく微笑んで「もちろん」と頷いたのだった。
■2章 結婚を意識した交際へ
霞が関にある外務省――別名、エリート集団の詰所。ここには日本と外国の架け橋となるべく活躍する人間が多く勤めている。例外なく、恭平もその一人だ。
大学に入りたての頃は父の背を追いかけるように外交官になることが憧れでもあったし、父と同じ職務を目指すことに抵抗はとくになかった。
職業柄、留学と海外勤務を繰り返し、ほとんどが海外での暮らしとなることにもなんら苦に感じることはなかった。
いずれ、何度目かの海外勤務を経験する内にどこかの国の大使館に勤め、事務官や書記官或いは通訳官などよりも上の立場……公使や大使となり、戻って来る頃には父のように上層部の官僚のひとりになっているかもしれない。正にあらかじめ敷かれたレールの上に自分の人生が在るといっても過言ではない。特段それに反発する気もない。
なぜなら、恭平は自分の仕事に誇りを持っているからだ。この仕事は恭平の知識欲を満たしてくれる。好奇心や探求心を刺激するものでもある。また、人との繋がりを持たせること、互いの異なる文化に理解を深めること、そして日本という国を理解してもらい相手の国を理解すること、その仲介役として結果を出すことにやりがいを感じているのだ。
だが、すべてうまくいく仕事などない。どうしても話が通じない相手というのは存在する。また、言葉を選ぶだけでは埋められない国同士の難しい溝や問題だってある。そんな業務が立て続けに起きたときには、さすがの恭平もネガティブな思考の海に身を預けたくなることもあった。
そういうときのためにメンタルケアの一環として、恭平は異国の詩集を読むことにしている。単純に物語の文章というよりもできたら行間に読み取れる自由がある詩文がいい。外国語の言葉のリズムを感じることで、不思議と思考がクリアになり心の整理がつくのだ。
そんなメンタルに不調の波が押し寄せるような激務が続いていた折に、起業家が集まる小規模なレセプションパーティーの場で、恭平はある人に出会った。昨年の十一月くらいの話だ。