諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
ある人とは、百川咲良――ひとりの通訳の女性だった。彼女は大手通訳会社ブレインワーズに所属しており、英語とフランス語そしてスペイン語に精通しているらしい。
彼女は、フランス出身のひとりの起業家の通訳担当だった。起業家は新開発商品および起業家が持つ技術を日本の企業に売り込みたくてやってきたのだ。
恭平もまた異業種並びに異国間の商談の相談役ならびに仲介役として情報を得るために出席していた。
日頃から外国客に通訳がついている状況など、外交官の恭平にとってなんら珍しいことではなかったし、通訳ひとりに特別感情を動かされるようなことはそれまでに一度もなかった。それなのに、なぜかその日は彼女から目が離せなかった。
第一印象では真面目そうな堅い印象を受けるのに、彼女が扱う言葉の隅々には相手へのやわらかな優しさが溢れているように感じられた。
耳に触れる言葉、巧みな表現力、丁寧なフレーズ、彼女の芯の通った声、気遣いを感じさせる空気、心地のいいリズムと間の取り方、それらすべてに居心地のよさを感じたのだ。
通訳に求められるのは外国語の流暢さは勿論だが、双方の意思疎通を図るためにわかりやすい言葉を選ぶことだ。だが、それはケースバイケース。現場によって扱う言葉も表現も変わってくることだろう。それを彼女はしっかり理解している。
その上で、相手を思いやる言葉やフレーズをあえて選択している、その真心が伝わってくる。依頼者の熱意がそのままダイレクトに商談相手へと訴えかけられるように。そして言葉だけではなく表情や真摯な態度でも寄り添っている。
(彼女はいい通訳だな)
それは恭平にとって運命の出会い、その序章だったように思う。
その後も、恭平は咲良の様子を窺っていた。
依頼者のプレゼンしたい内容を正確に丁寧に伝えるだけではなく、人の心にそっと寄り添う通訳の仕方に恭平は感銘を受けていた。
(やっぱり彼女はいいな……)
言葉を平たくするとか和らげる、と日本人は表現することがあるだろう。そんなふうに日本の古き良き伝統的な堅苦しい文章をやわらかくほぐすように別の表現に変えて、相手に気遣いを見せる。そんなやさしさを感じたのだ。
彼女は、フランス出身のひとりの起業家の通訳担当だった。起業家は新開発商品および起業家が持つ技術を日本の企業に売り込みたくてやってきたのだ。
恭平もまた異業種並びに異国間の商談の相談役ならびに仲介役として情報を得るために出席していた。
日頃から外国客に通訳がついている状況など、外交官の恭平にとってなんら珍しいことではなかったし、通訳ひとりに特別感情を動かされるようなことはそれまでに一度もなかった。それなのに、なぜかその日は彼女から目が離せなかった。
第一印象では真面目そうな堅い印象を受けるのに、彼女が扱う言葉の隅々には相手へのやわらかな優しさが溢れているように感じられた。
耳に触れる言葉、巧みな表現力、丁寧なフレーズ、彼女の芯の通った声、気遣いを感じさせる空気、心地のいいリズムと間の取り方、それらすべてに居心地のよさを感じたのだ。
通訳に求められるのは外国語の流暢さは勿論だが、双方の意思疎通を図るためにわかりやすい言葉を選ぶことだ。だが、それはケースバイケース。現場によって扱う言葉も表現も変わってくることだろう。それを彼女はしっかり理解している。
その上で、相手を思いやる言葉やフレーズをあえて選択している、その真心が伝わってくる。依頼者の熱意がそのままダイレクトに商談相手へと訴えかけられるように。そして言葉だけではなく表情や真摯な態度でも寄り添っている。
(彼女はいい通訳だな)
それは恭平にとって運命の出会い、その序章だったように思う。
その後も、恭平は咲良の様子を窺っていた。
依頼者のプレゼンしたい内容を正確に丁寧に伝えるだけではなく、人の心にそっと寄り添う通訳の仕方に恭平は感銘を受けていた。
(やっぱり彼女はいいな……)
言葉を平たくするとか和らげる、と日本人は表現することがあるだろう。そんなふうに日本の古き良き伝統的な堅苦しい文章をやわらかくほぐすように別の表現に変えて、相手に気遣いを見せる。そんなやさしさを感じたのだ。