諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
「この仕事が終わったら、少し時間をもらってもいいかな? また一緒に食事でもどうかな?」
 きっと最初から恭平はそのつもりだったのだろう。咲良も頷く。
「はい。是非ご一緒したいです」
 仕事終わりに彼が予約していたというレストランに入った。コース料理を味わいながら、色々な話をした。
 まずはこの間のこと、今日の仕事のこと。それから外交官のこと、通訳のこと、お互いの仕事の話からだ。それから、今までの経歴や最近の日常はどう過ごしているか、好みや趣味など――。
 話をすればするほど、色々なことがもっと聞きたくて、彼をもっと知りたくなっていく。その欲求が尽きることがない。
 お酒が入ったせいもあるかもしれないが、まるで昔の知人に近況を一気に話したみたいな高揚感があった。
 ふたりきりの空間に緊張はしたが、恭平と一緒にいると肩の力が自然と抜けてリラックスしていることに咲良は気付いた。
 恭平の巧みな話術のせいだろうか。それとも彼の人柄や雰囲気だろうか。彼の柔軟なモノの味方や考え方は、咲良の知識欲をくすぐり色々なものを吸収しようという好奇心と探求心を刺激してくれる。
 咲良は彼ともっと一緒にいたいと思った。時間が過ぎていくことが勿体なくて、彼と離れがたいとさえ感じていた。
 ドキドキと鼓動が早鐘を打っていて頬が熱い。これはお酒のせいだけではないだろう。彼をつよく意識している証拠であることはいくら恋愛に疎い咲良だってわかった。
(高宮さんは私のことをどう思っているのだろう)
 知り合いたいと接触してきたのは恭平からだった。彼が咲良に興味を持ったのは仕事を通して、人として共感できることが多いからというのは感じている。
 では、女性としてはどうなのだろう。それが知りたい。恋という恋をしたことがなかった咲良にとって、これが自分にとっても彼にとっても恋であるなら嬉しいと感じていた。
 出会ってからのめり込むように彼に夢中になっていくのがわかる。今日日まで恋を知らなかった自分などまるでどこにもいなかったみたいに。
 一度でも意識をすれば心臓が高鳴って息が苦しくなってくる。だが、これが自分の独りよがりの浮かれた考えなのだとしたらとても寂しい。
 先輩にからかわれたとき真面目な咲良は『恋』について思わず検索したことがあった。
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