諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
そんなたどたどしい咲良を手助けするように恭平は意地悪と優しさを織り交ぜた煽り方をする。
「順序が大事というなら、今、俺は君に何をしようとしているのかな」
そういう情熱的な目を向ける恭平にドキドキしながら咲良は照れや恥らいを押し込めて彼の名を初めて呼んだ。
「恭平さん」
まるで金平糖を初めて味わったときみたいな甘くてくすぐったいような感触。顔全体がかっと熱くなるのを感じて隠れたくなってしまいたくなるような羞恥心。ジタバタすることもできずに恭平のことをただ見つめることしかできない。
「咲良……好きだよ。愛してる」
再び、恭平は想いを込めるように言う。きっとこれは同じように言ってほしいという催促かもしれないと、咲良は学習する。照れはあるけれど、むしろ咲良の方からも伝えたいという衝動の方が先立った。
「恭平さん、私もあなたのことが好きです。愛しています」
「ん。咲良、こっちにおいで」
ご褒美に彼が甘い口づけをくれる。自分からもご褒美をあげなければ。そんなふうに突き動かされるように、咲良は腕を伸ばして彼にしがみついた。
「……恭平さん」
「頬が桜色に色づいて……綺麗だ。可愛い」
痛くならないように思いやりをもって。でも、伝えたい想いをすべて注ぐように。恭平が動くたびに与えてくる感覚を、咲良はどれほどでも受け止めたくなっていた。
名前と名前をかけて大事に呼んでくれる。その声を、彼の愛し方を、咲良はきっといつまでも忘れられないと思った。
桜の季節はとっくに過ぎているけれど、次の春がきたときに彼と結ばれたときのことをまた思い出すかもしれない。
春が過ぎ、夏を迎え、そして秋がやってくる日、冬を越え、その先に――。
それからまもなく、梅雨が明けて日毎に夏が近づいていくある日のこと――。
恭平が咲良を両親に紹介したいと言った。近々仕事で日本に帰国しているタイミングだからちょうどいいということだったが、咲良はというと、当日を迎えてもまだ心の準備ができていなかった。
「そんなに緊張しなくてもいい」
恭平は当然のようにそう言うけれど。
「……そうはいきませんよ」
咲良は胃のあたりが締め付けられるのを感じつつ、深呼吸をした。いくら吸っても満たされないような不安感で鳩尾がずきずきする。ともすれば酸欠になってしまいそうだった。
「順序が大事というなら、今、俺は君に何をしようとしているのかな」
そういう情熱的な目を向ける恭平にドキドキしながら咲良は照れや恥らいを押し込めて彼の名を初めて呼んだ。
「恭平さん」
まるで金平糖を初めて味わったときみたいな甘くてくすぐったいような感触。顔全体がかっと熱くなるのを感じて隠れたくなってしまいたくなるような羞恥心。ジタバタすることもできずに恭平のことをただ見つめることしかできない。
「咲良……好きだよ。愛してる」
再び、恭平は想いを込めるように言う。きっとこれは同じように言ってほしいという催促かもしれないと、咲良は学習する。照れはあるけれど、むしろ咲良の方からも伝えたいという衝動の方が先立った。
「恭平さん、私もあなたのことが好きです。愛しています」
「ん。咲良、こっちにおいで」
ご褒美に彼が甘い口づけをくれる。自分からもご褒美をあげなければ。そんなふうに突き動かされるように、咲良は腕を伸ばして彼にしがみついた。
「……恭平さん」
「頬が桜色に色づいて……綺麗だ。可愛い」
痛くならないように思いやりをもって。でも、伝えたい想いをすべて注ぐように。恭平が動くたびに与えてくる感覚を、咲良はどれほどでも受け止めたくなっていた。
名前と名前をかけて大事に呼んでくれる。その声を、彼の愛し方を、咲良はきっといつまでも忘れられないと思った。
桜の季節はとっくに過ぎているけれど、次の春がきたときに彼と結ばれたときのことをまた思い出すかもしれない。
春が過ぎ、夏を迎え、そして秋がやってくる日、冬を越え、その先に――。
それからまもなく、梅雨が明けて日毎に夏が近づいていくある日のこと――。
恭平が咲良を両親に紹介したいと言った。近々仕事で日本に帰国しているタイミングだからちょうどいいということだったが、咲良はというと、当日を迎えてもまだ心の準備ができていなかった。
「そんなに緊張しなくてもいい」
恭平は当然のようにそう言うけれど。
「……そうはいきませんよ」
咲良は胃のあたりが締め付けられるのを感じつつ、深呼吸をした。いくら吸っても満たされないような不安感で鳩尾がずきずきする。ともすれば酸欠になってしまいそうだった。