諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
「落ち着いてくれ。大丈夫だ。どんな立場にあったとしても、俺は君の前で変わるか? 俺は俺だし、君は君だ」
そうやって恭平はいつだって大人の余裕を見せる。そんな彼に対し、自分はまだ少しのことで動揺してしまう。悔しくなった咲良は一言だけ反論をしてみることにした。
「それは詭弁というものでは」
「君は生真面目だな。まあ、そこが可愛いところだけど」
当たり前のことのようにさらっと誉め言葉を口にする。やっぱり彼は何事にも動じない。
さあ行こう、と手を絡められて顔の中心に熱が集まってきた。
これは俗にいうバカップルと呼ばれる対象になっているのではないだろうか、と咲良はムキになった自己を省みる。横から温かな目で見られている気がして恭平の方を振り向けない。
でも、恭平の大きな手に包まれているうちに、だんだんと咲良の気持ちは落ち着きはじめていた。
(不思議。緊張がほぐれて……少しずつ好奇心の方が勝っていくみたい)
恭平の両親はどういう人なのだろう。彼が素敵な人だからきっとご両親も……というのは安直な考えだろうか。無論、親と子は血の繋がりがあってもまた違う人間だ。だが、高貴な家柄の有能な人材であることには変わりないだろう。
父親は外務省の幹部であり、米国の日本大使館で大使を努めたこともある人だ。エリート中のエリート。そして彼の母親は外交官の妻として常に寄り添うように側についているのだという。
自分は外交官になるべくしてなったといっていい、と恭平は言った。彼は自分の好きなことは話すが、必要以上に生い立ちや経歴についてあまり話そうとしない。そんな彼にも父親を尊敬して志した過去があったのだろうか。
高宮恭平の父の名は嗣利(つぐとし)、母の名は和葉(かずは)。
ファイリングされた過去の外務省や外交関係の新聞記事を経由し、事前に情報は知り得ていた。恭平が緊張しないようにと咲良に見せてくれたものだ。
予約していた地中海料理の店は、嗣利と和葉が好きなところで親子でもよく食事をすることがあるという。
彼らは特にイタリアのヴェネチアやギリシャのアテネなどといった地中海の沿岸都市、それからスペインのかの有名なサグラダ・ファミリアがあるバルセロナや古都トレドなどが好きだということだった。古都トレドは世界文化遺産にも登録されていて、現在のマドリードの前に首都だった地だ。
そうやって恭平はいつだって大人の余裕を見せる。そんな彼に対し、自分はまだ少しのことで動揺してしまう。悔しくなった咲良は一言だけ反論をしてみることにした。
「それは詭弁というものでは」
「君は生真面目だな。まあ、そこが可愛いところだけど」
当たり前のことのようにさらっと誉め言葉を口にする。やっぱり彼は何事にも動じない。
さあ行こう、と手を絡められて顔の中心に熱が集まってきた。
これは俗にいうバカップルと呼ばれる対象になっているのではないだろうか、と咲良はムキになった自己を省みる。横から温かな目で見られている気がして恭平の方を振り向けない。
でも、恭平の大きな手に包まれているうちに、だんだんと咲良の気持ちは落ち着きはじめていた。
(不思議。緊張がほぐれて……少しずつ好奇心の方が勝っていくみたい)
恭平の両親はどういう人なのだろう。彼が素敵な人だからきっとご両親も……というのは安直な考えだろうか。無論、親と子は血の繋がりがあってもまた違う人間だ。だが、高貴な家柄の有能な人材であることには変わりないだろう。
父親は外務省の幹部であり、米国の日本大使館で大使を努めたこともある人だ。エリート中のエリート。そして彼の母親は外交官の妻として常に寄り添うように側についているのだという。
自分は外交官になるべくしてなったといっていい、と恭平は言った。彼は自分の好きなことは話すが、必要以上に生い立ちや経歴についてあまり話そうとしない。そんな彼にも父親を尊敬して志した過去があったのだろうか。
高宮恭平の父の名は嗣利(つぐとし)、母の名は和葉(かずは)。
ファイリングされた過去の外務省や外交関係の新聞記事を経由し、事前に情報は知り得ていた。恭平が緊張しないようにと咲良に見せてくれたものだ。
予約していた地中海料理の店は、嗣利と和葉が好きなところで親子でもよく食事をすることがあるという。
彼らは特にイタリアのヴェネチアやギリシャのアテネなどといった地中海の沿岸都市、それからスペインのかの有名なサグラダ・ファミリアがあるバルセロナや古都トレドなどが好きだということだった。古都トレドは世界文化遺産にも登録されていて、現在のマドリードの前に首都だった地だ。