諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
『俺は君を応援しているよ』
恭平がそんなふうに言ってくれた。
それが何よりの咲良の支えだった。
(私も……あなたのことを応援していますから。恭平さん)
それから自分が想像していた以上に仕事に追われる日々が続き、さらに一ヶ月ほどが経過した十一月の末。
真冬がいよいよ目前に迫る頃――。
退勤の時間にロビーを通ると、思いがけない人がそこで待っていた。
高宮和葉。恭平の母親だ。それもひとりで。品のいいストールを首に巻いて凛とした姿勢で立つその姿は人の目を引いた。
咲良は和葉の側に引き寄せれるかのように出向き、彼女に声をかけた。
「お母様、こちらに何かご用事でしたか?」
「ええ。こちらのあなたに」
「……え」
「それと、あなたにお母様と言われることはきっとこの先ないでしょうね」
今の和葉からは以前の食事会で挨拶をしたときのような好意的な雰囲気は感じられない。まるで知らない別人かのようだ。
咲良が虚を衝かれていると、和葉は大事な話がしたいから外へと誘導した。どうやら、あらかじめ咲良の退勤時刻を狙っていたらしい。
会社の外には一台のタクシーが待っていた。
二人で乗り込むが、会話をするような雰囲気はなかった。
そこから十五分ほど離れた隠れ家風のレストランに到着した。店の雰囲気やメニューの内容的に洋食屋のようだった。
若いシェフが出迎えてコートや手荷物を預かると、オーナーシェフが挨拶にくる。
「高宮様、お待ちしていました」
「お連れ様もご一緒に、奥の個室のお席へどうぞ」
一体、和葉はなんの用事があるというのだろうか。
ひとまず咲良は和葉についていくしかない。
ただ、さっきの彼女の一言が胸の中に不穏な影を落としている。どういう意図でそう言ったのか、まずは早く話を聞きたいと思った。
食前酒に前菜とスープが運ばれてきたタイミングで、和葉は咲良を見た。とても乾杯するという雰囲気ではない。
「単刀直入に申し上げます。咲良さん、あなたは恭平とどういうつもりでお付き合いしているのかしら」
「もちろん真剣に交際を――」
……という言葉は取り合われなかった。
出会ったときもそうだったが、和葉は自分の主張を先にしたがる性格をしている。それ以上に今日は咲良の言葉を待つ気はないのだと伝わってくる。
恭平がそんなふうに言ってくれた。
それが何よりの咲良の支えだった。
(私も……あなたのことを応援していますから。恭平さん)
それから自分が想像していた以上に仕事に追われる日々が続き、さらに一ヶ月ほどが経過した十一月の末。
真冬がいよいよ目前に迫る頃――。
退勤の時間にロビーを通ると、思いがけない人がそこで待っていた。
高宮和葉。恭平の母親だ。それもひとりで。品のいいストールを首に巻いて凛とした姿勢で立つその姿は人の目を引いた。
咲良は和葉の側に引き寄せれるかのように出向き、彼女に声をかけた。
「お母様、こちらに何かご用事でしたか?」
「ええ。こちらのあなたに」
「……え」
「それと、あなたにお母様と言われることはきっとこの先ないでしょうね」
今の和葉からは以前の食事会で挨拶をしたときのような好意的な雰囲気は感じられない。まるで知らない別人かのようだ。
咲良が虚を衝かれていると、和葉は大事な話がしたいから外へと誘導した。どうやら、あらかじめ咲良の退勤時刻を狙っていたらしい。
会社の外には一台のタクシーが待っていた。
二人で乗り込むが、会話をするような雰囲気はなかった。
そこから十五分ほど離れた隠れ家風のレストランに到着した。店の雰囲気やメニューの内容的に洋食屋のようだった。
若いシェフが出迎えてコートや手荷物を預かると、オーナーシェフが挨拶にくる。
「高宮様、お待ちしていました」
「お連れ様もご一緒に、奥の個室のお席へどうぞ」
一体、和葉はなんの用事があるというのだろうか。
ひとまず咲良は和葉についていくしかない。
ただ、さっきの彼女の一言が胸の中に不穏な影を落としている。どういう意図でそう言ったのか、まずは早く話を聞きたいと思った。
食前酒に前菜とスープが運ばれてきたタイミングで、和葉は咲良を見た。とても乾杯するという雰囲気ではない。
「単刀直入に申し上げます。咲良さん、あなたは恭平とどういうつもりでお付き合いしているのかしら」
「もちろん真剣に交際を――」
……という言葉は取り合われなかった。
出会ったときもそうだったが、和葉は自分の主張を先にしたがる性格をしている。それ以上に今日は咲良の言葉を待つ気はないのだと伝わってくる。