諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
(私は何を思い上がっていたのだろう)
振り返れば振り返るほどに、自分がただ恭平のやさしさに甘えていただけだったことに気付かされるだけだった。
和葉の言う通り、それはただの独りよがりな我儘で、傲慢でしかない。
それを、純粋な愛だなんて呼べるのだろうか。
恭平は咲良に対して不満を挙げたことはない。いつも彼に我慢をさせていたのではないだろうか。
恭平が何も言わずに受け止めてくれるからと、彼がくれた透明な心を踏みにじる行為を知らずにしていたのではないか。
咲良は左薬指に今はない婚約指輪を思い浮かべながらそっと触れる。
(恭平さん……)
婚約指輪は仕事の時はつけずに恭平と一緒にいるときだけつけていた。紛失しないように家の中に大切に保管してあるのだ。そして仕事が終わったときにはそっと開いて、その純粋な愛の煌めきに胸をときめかせ、彼を想ったものだ。
(私は今のままで、あなたに相応しい人に……なれるのでしょうか)
今の咲良には正解が何なのかわからなかった。
ただ迷子の猫のように路地裏に佇むしかなかった。
***
十二月の半ばが過ぎる頃、周りはクリスマスやニューイヤーを目前に盛り上がっているが、当然、咲良はとてもそんな気分になれなかった。
あれからどうしようか悩んでいるうちに二週間が経過していた。
しかしこのままずるずるしているのはよくないと、ようやく咲良は恭平に久方ぶりに連絡を入れることにした。
彼の仕事が終わって落ち着いたらテレビ電話をしようかと提案されたのだが、きっと恭平の顔を見たら決心が鈍ってしまいそうだったからなんとか言い訳をして通話だけにしてもらった。
『しばらく連絡がとれなくてすまない』
「いえ」
声が上擦ってしまった。それに、表情も強張っている。やはり電話だけにしておいてよかった。
『元気にしていたか?』
「はい」
咲良が返事をすると、恭平はさっそく近況を教えてくれたり、クリスマスマーケットがどうという話や、フランスの冬の話をしてくれた。
いつもだったら咲良は食い気味に話を引き出していたところだが、今日はずっと切り出すタイミングばかりを窺っている。こんな自分が嫌で、彼に申し訳なくて仕方がない。どんどん気分が重たくなっていく。
『どうした。なんだか、あまり元気そうじゃないが、何かあった?』
振り返れば振り返るほどに、自分がただ恭平のやさしさに甘えていただけだったことに気付かされるだけだった。
和葉の言う通り、それはただの独りよがりな我儘で、傲慢でしかない。
それを、純粋な愛だなんて呼べるのだろうか。
恭平は咲良に対して不満を挙げたことはない。いつも彼に我慢をさせていたのではないだろうか。
恭平が何も言わずに受け止めてくれるからと、彼がくれた透明な心を踏みにじる行為を知らずにしていたのではないか。
咲良は左薬指に今はない婚約指輪を思い浮かべながらそっと触れる。
(恭平さん……)
婚約指輪は仕事の時はつけずに恭平と一緒にいるときだけつけていた。紛失しないように家の中に大切に保管してあるのだ。そして仕事が終わったときにはそっと開いて、その純粋な愛の煌めきに胸をときめかせ、彼を想ったものだ。
(私は今のままで、あなたに相応しい人に……なれるのでしょうか)
今の咲良には正解が何なのかわからなかった。
ただ迷子の猫のように路地裏に佇むしかなかった。
***
十二月の半ばが過ぎる頃、周りはクリスマスやニューイヤーを目前に盛り上がっているが、当然、咲良はとてもそんな気分になれなかった。
あれからどうしようか悩んでいるうちに二週間が経過していた。
しかしこのままずるずるしているのはよくないと、ようやく咲良は恭平に久方ぶりに連絡を入れることにした。
彼の仕事が終わって落ち着いたらテレビ電話をしようかと提案されたのだが、きっと恭平の顔を見たら決心が鈍ってしまいそうだったからなんとか言い訳をして通話だけにしてもらった。
『しばらく連絡がとれなくてすまない』
「いえ」
声が上擦ってしまった。それに、表情も強張っている。やはり電話だけにしておいてよかった。
『元気にしていたか?』
「はい」
咲良が返事をすると、恭平はさっそく近況を教えてくれたり、クリスマスマーケットがどうという話や、フランスの冬の話をしてくれた。
いつもだったら咲良は食い気味に話を引き出していたところだが、今日はずっと切り出すタイミングばかりを窺っている。こんな自分が嫌で、彼に申し訳なくて仕方がない。どんどん気分が重たくなっていく。
『どうした。なんだか、あまり元気そうじゃないが、何かあった?』