諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
『俺だって君を困らせるのは本意ではないよ。君の仕事をしている姿が好きで惹かれた。だから、君が仕事を大事にする上で、離れずに側にいる誰かに惹かれたというのなら……呑むしかないだろうな』
恭平の寂しげな声に胸がまた塞がっていく。彼が受け入れたら最後、もう二人の間の距離は二度と埋まらない。
『君を応援したいと思っているし、君の笑顔を曇らせたくない。何より俺は……君の幸せを願っているんだ』
「……っ」
窒息してしまいそうだった。
そんなことを言わないでほしい。
恭平の想いが嬉しくて訂正してしまいそうになる。
本当はさっき告げたことこそが嘘で、あなたのことを愛しているから別れたくない、と。
『咲良、俺を試したいだけなら今のうちに訂正して』
最後通告に、咲良は何度も唇を開きかけた。訂正したいという衝動が何度も湧いてはダメだと抑えつけるので精一杯で手が震えてきてしまう。
黙りこんでしまうと、何度か息遣いが聞こえたあと、彼の長いため息が落ちる。
『無言は君の答えということだな。わかった』
「指輪、は」
もう涙は瞳の中に溢れている。声が震え出してとまらない。
『それは君にあげたものだから、所有権は君にあるんだ。好きにしていいよ』
存外に返されても困ると言いたいのはわかった。咲良には選択の余地はないだろう。
何度目かの沈黙が流れていく。
『用件はもういいかな』
とうとう恭平は離れる覚悟を決めたのだろう。さっきまでやさしかった彼の声が冷たく突き放す声に変わった。
『すまない。これから仕事なんだ。婚約は破棄することに了承した。ああ、今後のために音声データが必要ならこれを。或いは書面が必要ならば請求してくれればいい』
「そこまでは……大丈夫です」
『そう。それじゃあ、元気で。俺は君の通訳が本当に好きだったんだ。これからの君の活躍を期待しているよ』
嫌われても仕方ないのに、恭平は最後まで咲良を案じてくれている。そのことに泣きたくなってしまう。
「……あっ」
待って、と引き留めたくなった声が勝手にこぼれた。
『何?』
「ごめんなさい。私の都合で……あなたを傷つけてしまいました」
たくさん伝えたいことがあった。けれど、自己満足の懺悔になってしまったことを、口にした側から後悔した。
恭平の寂しげな声に胸がまた塞がっていく。彼が受け入れたら最後、もう二人の間の距離は二度と埋まらない。
『君を応援したいと思っているし、君の笑顔を曇らせたくない。何より俺は……君の幸せを願っているんだ』
「……っ」
窒息してしまいそうだった。
そんなことを言わないでほしい。
恭平の想いが嬉しくて訂正してしまいそうになる。
本当はさっき告げたことこそが嘘で、あなたのことを愛しているから別れたくない、と。
『咲良、俺を試したいだけなら今のうちに訂正して』
最後通告に、咲良は何度も唇を開きかけた。訂正したいという衝動が何度も湧いてはダメだと抑えつけるので精一杯で手が震えてきてしまう。
黙りこんでしまうと、何度か息遣いが聞こえたあと、彼の長いため息が落ちる。
『無言は君の答えということだな。わかった』
「指輪、は」
もう涙は瞳の中に溢れている。声が震え出してとまらない。
『それは君にあげたものだから、所有権は君にあるんだ。好きにしていいよ』
存外に返されても困ると言いたいのはわかった。咲良には選択の余地はないだろう。
何度目かの沈黙が流れていく。
『用件はもういいかな』
とうとう恭平は離れる覚悟を決めたのだろう。さっきまでやさしかった彼の声が冷たく突き放す声に変わった。
『すまない。これから仕事なんだ。婚約は破棄することに了承した。ああ、今後のために音声データが必要ならこれを。或いは書面が必要ならば請求してくれればいい』
「そこまでは……大丈夫です」
『そう。それじゃあ、元気で。俺は君の通訳が本当に好きだったんだ。これからの君の活躍を期待しているよ』
嫌われても仕方ないのに、恭平は最後まで咲良を案じてくれている。そのことに泣きたくなってしまう。
「……あっ」
待って、と引き留めたくなった声が勝手にこぼれた。
『何?』
「ごめんなさい。私の都合で……あなたを傷つけてしまいました」
たくさん伝えたいことがあった。けれど、自己満足の懺悔になってしまったことを、口にした側から後悔した。