諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
 そんなふうにどうにか納得させようとしている自分に気付いてしまえば滑稽になり、別れを惜しめば惜しむほど、どれほど咲良のことを愛していたのかを思い知らされるばかりだ。
 そして後悔が無限にループされていく。仕事に対してのプライドは自分にもある。だが、恋愛においてもプライドなんてものは必要だったか。みっともなかろうがもっと食い下がって引き止めるべきだったのではないか……と。
 だが、好きな人ができたと言っていた彼女を困らせるような結果は望んでいない。
『俺は君を応援しているよ』
 そんなふうに咲良に告げたのは紛れもない本心だ。彼女と出会い惹かれたのは、彼女が通訳だったから。まして彼女から大切なものを奪おうとする自分に、彼女を愛する資格はないだろう。
 今の恭平にできることは、せめて彼女の好きな人に負けない良き理解者の立場におさまることだ。そうして咲良への想いを昇華し、彼女を手放すことだけだ。最後にはその考えに行き着いた。
(せめて。どうかこの先の未来が、君の望むものでありますように)
 自分には彼女を忘れるための時間が必要だ。
 ならば、多忙のままその激流に身を任せようじゃないかと恭平は未練をシャットダウンするように目を瞑った。


***


 恭平に別れを告げてから一週間が経過した。
 今日は休日だが、何をする気にもなれない。結局、有給休暇と年末年始は自宅にこもったまま終わってしまいそうだ。
 婚約指輪もどうしたらいいかわからず、結局、箱に入れて引き出しに仕舞ったままだった。
 ベッドに横たわってぼんやりしていると、突然スマホの着信が鳴った。条件反射的にぱっと手を伸ばして画面を確認する。そこには実家と表示されていた。
 見た瞬間、咲良は盛大にため息をついた。
 恭平ではないかと真っ先に彼の顔を思い浮かべてしまった自分が憎らしい。自分から離れたくせに彼の気持ちがまだ在ることを望んでいるなんて。恭平のいう通りにこれでは彼を試しているようなものだ。
 別れを告げた以上、二人はもう他人同士。自分が言い出したことなのだ。きちんと責任を持って受け入れなければならない。それでも後悔は残ってしまう。
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