諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
恭平は小さくため息をつく。それから、ひどく悔恨を滲ませた表情で咲良を見つめた。
「婚約者、ね。母親からは縁談をもちかけられたが、その気にならないと断ったよ。第一、俺は……ずっと君のことが忘れられなかったし、今でも君のことを忘れていない」
「……っ!」
あまりにも自然に恭平が告白するからその言葉に驚いて咲良は息を呑んだ。
「そんな、はずが……ありません……」
もうあれから何年経過していると思っているのだろう。事情があって恵茉をひとりで育てていた咲良と違って、彼は何も知らずに自由になったのだ。
縛られるものがないならば、もうとっくに別の道を歩んでいてもおかしくなかったのに。
「咲良」
やさしく声をかけられて咲良はハッとする。
彼のペースに呑まれてはいけないのだった。
「たとえその子が俺との子じゃなくても構わない。だから、俺と今度こそ――」
「今度こそ。そう、今度こそです。私は、もう二度と同じ間違いはしたくないし、自立してなんとかやっていけていますから、あなたのことは……必要ありません」
言いながら胸に穴があくのを感じた。恭平の顔が見られなかった。ひとつ言葉にするたびに彼への愛がこみ上げてきてしまいそうになるからだ。だからあえて酷い言葉を選んだ。本当は彼にこんなこと言いたくなかったのに。彼を傷つけたくはなかったのに。
「必要ない、か」
咲良の頑ななな態度を崩すのは難しい、と恭平は一旦引くことを決めたのかもしれない。困ったように苦笑すると、恵茉へと目を向けた。
しがみついていた恵茉だが、恭平が誰なのかと不思議に思ったらしかった。こうしているだけなのが不安で抱き上げてしまおうと思ったそのとき、恵茉が足元にあった花びらに気をとられて駆け出す。
「あっ」
勢い余って飛び出したせいで、そのまま転んでしまいそうになった。その瞬間、恭平に抱きとめられる。
「っと。大丈夫かい」
恭平が恵茉の目的を察して足元の花びらをそっと拾い上げ、恵茉の小さな掌に載せる。
「あり、あと!」
ぱっと笑顔を咲かせた恵茉に、恭平の表情も綻んでいく。
「よく似合っている。君は将来、素敵なお姫様になるんだろうな」
そう言って見つめる恭平の眼差しがあたたかなものだったから、咲良はその場面に魅入ってしまい、間に割って入るタイミングを失ってしまった。
「婚約者、ね。母親からは縁談をもちかけられたが、その気にならないと断ったよ。第一、俺は……ずっと君のことが忘れられなかったし、今でも君のことを忘れていない」
「……っ!」
あまりにも自然に恭平が告白するからその言葉に驚いて咲良は息を呑んだ。
「そんな、はずが……ありません……」
もうあれから何年経過していると思っているのだろう。事情があって恵茉をひとりで育てていた咲良と違って、彼は何も知らずに自由になったのだ。
縛られるものがないならば、もうとっくに別の道を歩んでいてもおかしくなかったのに。
「咲良」
やさしく声をかけられて咲良はハッとする。
彼のペースに呑まれてはいけないのだった。
「たとえその子が俺との子じゃなくても構わない。だから、俺と今度こそ――」
「今度こそ。そう、今度こそです。私は、もう二度と同じ間違いはしたくないし、自立してなんとかやっていけていますから、あなたのことは……必要ありません」
言いながら胸に穴があくのを感じた。恭平の顔が見られなかった。ひとつ言葉にするたびに彼への愛がこみ上げてきてしまいそうになるからだ。だからあえて酷い言葉を選んだ。本当は彼にこんなこと言いたくなかったのに。彼を傷つけたくはなかったのに。
「必要ない、か」
咲良の頑ななな態度を崩すのは難しい、と恭平は一旦引くことを決めたのかもしれない。困ったように苦笑すると、恵茉へと目を向けた。
しがみついていた恵茉だが、恭平が誰なのかと不思議に思ったらしかった。こうしているだけなのが不安で抱き上げてしまおうと思ったそのとき、恵茉が足元にあった花びらに気をとられて駆け出す。
「あっ」
勢い余って飛び出したせいで、そのまま転んでしまいそうになった。その瞬間、恭平に抱きとめられる。
「っと。大丈夫かい」
恭平が恵茉の目的を察して足元の花びらをそっと拾い上げ、恵茉の小さな掌に載せる。
「あり、あと!」
ぱっと笑顔を咲かせた恵茉に、恭平の表情も綻んでいく。
「よく似合っている。君は将来、素敵なお姫様になるんだろうな」
そう言って見つめる恭平の眼差しがあたたかなものだったから、咲良はその場面に魅入ってしまい、間に割って入るタイミングを失ってしまった。