諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
仲居たちはキャッキャと声を弾ませて離れていく。
「まったく、恵茉よりもよっぽど子どもみたいな声を出して。あの子たちは。ねー恵茉」
祖母がそう言いながら恵茉を抱っこすると、咲良の方を見た。
「咲良」
「はい」
咲良は姿勢を正した。お小言をもらう気がしたからだ。だが、祖母はやれやれといったふうに表情を緩めた。大女将の顔から祖母の顔に戻っていた。
「何があったかわからないけど、恵茉のためにも、笑顔を忘れないでいなさい。いつかの日、あなたのお母さんがあなたにしてくれたようにね」
「……はい」
「だからといって独りで抱え込まないことよ。そのためにここがあるんでしょう」
「わかってる。いつもありがとう。おばあちゃん」
咲良が改めて感謝を告げると、祖母はくしゃりと表情を崩した。
「何を言っているの。私たちの方こそ感謝しているのよ。咲良、あなたがいて恵茉がいて、賑やかで楽しくて仕方ないわ。それに旅館のことも手伝ってもらえて。だから尚更、いつまでも頼りすぎないように気をつけないとって思っているの」
「そんな。頼ってほしいわ。お世話になっているぶん、私は……それぐらいしかできないんだから」
焦ったように食い下がると、いいえと祖母がかぶりを振った。
「ここは巣立っていく前の場所。それを忘れないでいてちょうだい。いつでも私たちは胸に刻んでいる。あなたも同じように考えていてほしい」
「……巣立っていく前の場所」
「ええ。そうよ」
それはまるで獅子の子落とし……我が子に試練を与えて突き放す親ライオンのような祖母の愛情深い眼差しに、咲良はもう何も言えなくなっていた。
察しのいい祖母のことだから、きっと咲良の胸の内を何もかもわかっているのだ。
「ばあさん、また咲良に説教しているんか」
咲良をいじめるんじゃないよ、と祖父が慌てたように前のめりに出てくる。祖母も孫には相当甘いと思うが祖父の甘さはまた別格だ。
「おじいさんこそ、説教だなんて聞き捨て悪いこといわないでくださらない?」
「なあ、ばあさんの小言は飽きただろう。咲良。少し将棋に付き合わないか? 恵茉も一緒で構わないぞ」
「構わないけど……」
「若人に任せっぱなしで困ったおじいさんね」
「まったく、恵茉よりもよっぽど子どもみたいな声を出して。あの子たちは。ねー恵茉」
祖母がそう言いながら恵茉を抱っこすると、咲良の方を見た。
「咲良」
「はい」
咲良は姿勢を正した。お小言をもらう気がしたからだ。だが、祖母はやれやれといったふうに表情を緩めた。大女将の顔から祖母の顔に戻っていた。
「何があったかわからないけど、恵茉のためにも、笑顔を忘れないでいなさい。いつかの日、あなたのお母さんがあなたにしてくれたようにね」
「……はい」
「だからといって独りで抱え込まないことよ。そのためにここがあるんでしょう」
「わかってる。いつもありがとう。おばあちゃん」
咲良が改めて感謝を告げると、祖母はくしゃりと表情を崩した。
「何を言っているの。私たちの方こそ感謝しているのよ。咲良、あなたがいて恵茉がいて、賑やかで楽しくて仕方ないわ。それに旅館のことも手伝ってもらえて。だから尚更、いつまでも頼りすぎないように気をつけないとって思っているの」
「そんな。頼ってほしいわ。お世話になっているぶん、私は……それぐらいしかできないんだから」
焦ったように食い下がると、いいえと祖母がかぶりを振った。
「ここは巣立っていく前の場所。それを忘れないでいてちょうだい。いつでも私たちは胸に刻んでいる。あなたも同じように考えていてほしい」
「……巣立っていく前の場所」
「ええ。そうよ」
それはまるで獅子の子落とし……我が子に試練を与えて突き放す親ライオンのような祖母の愛情深い眼差しに、咲良はもう何も言えなくなっていた。
察しのいい祖母のことだから、きっと咲良の胸の内を何もかもわかっているのだ。
「ばあさん、また咲良に説教しているんか」
咲良をいじめるんじゃないよ、と祖父が慌てたように前のめりに出てくる。祖母も孫には相当甘いと思うが祖父の甘さはまた別格だ。
「おじいさんこそ、説教だなんて聞き捨て悪いこといわないでくださらない?」
「なあ、ばあさんの小言は飽きただろう。咲良。少し将棋に付き合わないか? 恵茉も一緒で構わないぞ」
「構わないけど……」
「若人に任せっぱなしで困ったおじいさんね」