諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
「すまない。二人の話し声が聞こえたもので。若い者の邪魔をするつもりはなかったんだが……しかし、ばあさんの言うとおりだ。儂もそう思う。意固地になっても何も先には進まないもんだ。なあ、咲良」
「……おじいちゃん」
「孫やひ孫は可愛いですけれどね。いつまでもいてほしいと思いますよ」
「ああ、違いない」
いつも言い合いしている祖父母がお互いの顔を見て微笑み合う。なんだかんだ言っておしどり夫婦と仲居たちに言われるのも納得だ。
「さて、ご客人、一部屋空いているんじゃが、そう何度もご足労なさっては大変でしょう。うちに泊まっていかれてはどうですか?」
祖父の提案に、恭平はかぶりを振った。
「お気持ちは大変ありがいたのですが……いいえ。彼女を追い詰めている自覚はあります。だから離れてせめて考える時間を……と思うんです。傲慢でしょうか」
恭平そう言ってから咲良を見た。
「せめて、もう一日だけ猶予を……」
彼はこれまでも誠実に対話を望んでくれた。真実を知りたくても、咲良の想いや恵茉のことを尊重してくれた。
祖母がいうように、意固地になっていることくらいわかっている。咲良の中に説明のつかない感情がある。もう少しだけ整理をしたかった。
どうして拒んでしまうのか、こんなにも悩んで迷ってしまうのか。そう感じてしまうのは、あの頃と今の気持ちをちゃんと伝えないままだからなのかもしれない。
「……明日、東京に戻る前に、答えを聞かせてほしい」
それじゃあ、と恭平が踵を返そうとする。
その時、咲良の脳裏に別れを告げた日のことがフラッシュバックした。
あのときは、ああするしかないと思った。
けれど、今はすべてを理解した上で、彼は迎えにきてくれた。そんな彼の気持ちを無視して、ただ拒んで、強がったまま背中を向けて、それで本当に後悔しないといえるだろうか。
忘れられなかった。忘れていない。今でも彼のことを愛している。きっとこの先も彼以外は考えられない。
(いいの? 彼を二度失うことになっても)
自分の中の誰かが胸の内を強く叩いた気がした。
それに突き動かされるように咲良は思わず声を出していた。
「待って! 行かないで、恭平さん」
気付いたら、咲良は恭平の背を引き留めてしまっていた。猶予なんてもう必要なかったのだ。
「……咲良」
「……おじいちゃん」
「孫やひ孫は可愛いですけれどね。いつまでもいてほしいと思いますよ」
「ああ、違いない」
いつも言い合いしている祖父母がお互いの顔を見て微笑み合う。なんだかんだ言っておしどり夫婦と仲居たちに言われるのも納得だ。
「さて、ご客人、一部屋空いているんじゃが、そう何度もご足労なさっては大変でしょう。うちに泊まっていかれてはどうですか?」
祖父の提案に、恭平はかぶりを振った。
「お気持ちは大変ありがいたのですが……いいえ。彼女を追い詰めている自覚はあります。だから離れてせめて考える時間を……と思うんです。傲慢でしょうか」
恭平そう言ってから咲良を見た。
「せめて、もう一日だけ猶予を……」
彼はこれまでも誠実に対話を望んでくれた。真実を知りたくても、咲良の想いや恵茉のことを尊重してくれた。
祖母がいうように、意固地になっていることくらいわかっている。咲良の中に説明のつかない感情がある。もう少しだけ整理をしたかった。
どうして拒んでしまうのか、こんなにも悩んで迷ってしまうのか。そう感じてしまうのは、あの頃と今の気持ちをちゃんと伝えないままだからなのかもしれない。
「……明日、東京に戻る前に、答えを聞かせてほしい」
それじゃあ、と恭平が踵を返そうとする。
その時、咲良の脳裏に別れを告げた日のことがフラッシュバックした。
あのときは、ああするしかないと思った。
けれど、今はすべてを理解した上で、彼は迎えにきてくれた。そんな彼の気持ちを無視して、ただ拒んで、強がったまま背中を向けて、それで本当に後悔しないといえるだろうか。
忘れられなかった。忘れていない。今でも彼のことを愛している。きっとこの先も彼以外は考えられない。
(いいの? 彼を二度失うことになっても)
自分の中の誰かが胸の内を強く叩いた気がした。
それに突き動かされるように咲良は思わず声を出していた。
「待って! 行かないで、恭平さん」
気付いたら、咲良は恭平の背を引き留めてしまっていた。猶予なんてもう必要なかったのだ。
「……咲良」