諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
恭平が穏やかに諭す。その声に安堵し、喉に張り付いた言葉をゆっくり内側から剥がしていく。そして、彼に言いたかった本心を引き出して、なんとか紡ぐことができた。
「私は一度、逃げ出したんです。あなたから」
「うん」
「こんな身勝手な私を信じてくれるんですか? あなたに真実を告げずにいたのに……それでも信じてもらえますか?」
恵茉の前では涙を流すまい、と思っていた。ずっと笑顔でいたい。そんなふうに気丈に振舞うことが親としての責務だと思ってきた。
でも、今は……もう止められなかった。
「君は、大事なものを守るために引いたんだ。それが不正解だとは思わない」
恭平はいつも自分の感情よりも他人の事情や想いを汲み取る人だ。もどかしいほどに。
「詭弁ですよ」
恭平は困ったように笑う。それから遠慮がちに手を伸ばすと、咲良の瞳から零れだした涙をそっと指で拭った。
「最初から、俺がちゃんと君をさらっておけばよかった。何か事情があるんじゃないかともっと早く気付けばよかった。君の苦しみや悲しみや、抱え込んでいたものを包んであげられたらよかった。俺は、情けないかな、あのとき自分で手一杯になっていて視野が狭くなっていたんだと思う。もっとちゃんと君の話を聞いて些細な変化に気付くべきだった。ごめん」
「私こそ……ひとりで抱え込んで、勝手に結論づけて、あなたをもっと頼って、信じるべきでした。そしたら二人で……未来を拓けたかもしれなかったのに。ごめんなさい」
たくさんの後悔が溢れては零れていく。
あの日、言えなかった言葉たちが次々に。
山の向こうに落ちかけていく夕陽の光が最後につよく一筋の光を差し込んできて、咲良の瞳を宝石のように輝かせる。ぽつり、ぽつり、とと雨のしずくのように頬を滑り落ちていく。
「まだ遅くないだろ」
「……そう思いますか? 本当に?」
「ああ。過去は過去においてこよう。君に頼ってもらえるよう、信じてもらえるように努力する。これから先の未来に約束するよ。俺は必ず、君たちを大事にする」
「……っ」
「だから、咲良。俺についてきてほしい」
これが最後の返事になる。
だから、咲良はしっかりと彼のことを受けとめ、それからようやくまとまった思考に一息つき、彼に返事を伝える。
「……はい」
「ありがとう」
「私は一度、逃げ出したんです。あなたから」
「うん」
「こんな身勝手な私を信じてくれるんですか? あなたに真実を告げずにいたのに……それでも信じてもらえますか?」
恵茉の前では涙を流すまい、と思っていた。ずっと笑顔でいたい。そんなふうに気丈に振舞うことが親としての責務だと思ってきた。
でも、今は……もう止められなかった。
「君は、大事なものを守るために引いたんだ。それが不正解だとは思わない」
恭平はいつも自分の感情よりも他人の事情や想いを汲み取る人だ。もどかしいほどに。
「詭弁ですよ」
恭平は困ったように笑う。それから遠慮がちに手を伸ばすと、咲良の瞳から零れだした涙をそっと指で拭った。
「最初から、俺がちゃんと君をさらっておけばよかった。何か事情があるんじゃないかともっと早く気付けばよかった。君の苦しみや悲しみや、抱え込んでいたものを包んであげられたらよかった。俺は、情けないかな、あのとき自分で手一杯になっていて視野が狭くなっていたんだと思う。もっとちゃんと君の話を聞いて些細な変化に気付くべきだった。ごめん」
「私こそ……ひとりで抱え込んで、勝手に結論づけて、あなたをもっと頼って、信じるべきでした。そしたら二人で……未来を拓けたかもしれなかったのに。ごめんなさい」
たくさんの後悔が溢れては零れていく。
あの日、言えなかった言葉たちが次々に。
山の向こうに落ちかけていく夕陽の光が最後につよく一筋の光を差し込んできて、咲良の瞳を宝石のように輝かせる。ぽつり、ぽつり、とと雨のしずくのように頬を滑り落ちていく。
「まだ遅くないだろ」
「……そう思いますか? 本当に?」
「ああ。過去は過去においてこよう。君に頼ってもらえるよう、信じてもらえるように努力する。これから先の未来に約束するよ。俺は必ず、君たちを大事にする」
「……っ」
「だから、咲良。俺についてきてほしい」
これが最後の返事になる。
だから、咲良はしっかりと彼のことを受けとめ、それからようやくまとまった思考に一息つき、彼に返事を伝える。
「……はい」
「ありがとう」