諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
花の香りと煙が漂う中、静かな時間が流れていく。
しばらくそうしてから、祖父がゆっくりと立ち上がった。
「だからこそ、おまえたちには幸せになってほしいと思うんだ。咲良、恵茉……そして恭平さん」
「おじいちゃん……」
「ええ。必ず」
恭平が返事をすると、祖父は穏やかな微笑みを浮かべた。
「じいじ」
何かを感じたらしい恵茉が泣きそうな顔をして祖父に手を伸ばす。子どもながらに別れの予感を察したのだろうか。先ほどの祖母や従業員との賑やかな雰囲気の中のお別れとは違うから尚更かもしれない。
「なんだ。恵茉や。心配するな。いつもの寝る前のまたね、だぞ」
指切りをして祖父は笑う。
時には嘘も必要だ、と目配せをする。その祖父の気遣いに咲良もまた泣きそうになる。
「親子そろってぎゃんぎゃん泣く前に、ほらはよ出発せえ」
「ん、またね! おじいちゃん」
「ああ! 元気でやりなさい。うちのばあさんに負けないようにな」
とうとう顔をくしゃくしゃにして泣き出した恵茉を抱きしめ、咲良も目に涙をためたまま祖父に手を振った。
祖父を探して迎えに来たらしい祖母の姿も見えた。二人が手を大きく振る。それから目元を手ぬぐいやハンカチで拭うのが見えて、咲良はまた泣き笑いのようになって二人が見えなくなるまで手を振り続けた。
「素敵な人たちだな。君はいいところで育ったんだね」
想いを込めたように恭平が言う。誰でもない彼にそんなふうに思ってもらえることが嬉しかった。
「……はい」
「じゃあ、行こうか」
恭平のやさしい声に促されるままに咲良は頷いて、ハイヤーが待っている場所まで戻っていく。
遠くなっていく故郷を眺めてから、咲良は祖父母の愛情にあらためて感謝をした。
恵茉は咲良にがっしりとしがみついている。頬は涙の痕でぐしゃぐしゃになっていた。
その後、三人で後部座席のハイヤーの乗り込んでからも、恵茉はなかなかチャイルドシートに座ってくれなかったり、しばらくぐずってはいたりはしたが、気に入った本を幾つか授けて恭平に相手をしてもらっているうちにようやくその気になったらしい。
ものの数分で恵茉はケロッとした顔をして本をめくっている。足をぶらぶらとさせてご機嫌な様子。今は星の王子様の挿絵入りの詩集がお気に入りのようだ。
「恭平さんは、子どもをあやすのもうまいですね。さすが、人たらしですね」
しばらくそうしてから、祖父がゆっくりと立ち上がった。
「だからこそ、おまえたちには幸せになってほしいと思うんだ。咲良、恵茉……そして恭平さん」
「おじいちゃん……」
「ええ。必ず」
恭平が返事をすると、祖父は穏やかな微笑みを浮かべた。
「じいじ」
何かを感じたらしい恵茉が泣きそうな顔をして祖父に手を伸ばす。子どもながらに別れの予感を察したのだろうか。先ほどの祖母や従業員との賑やかな雰囲気の中のお別れとは違うから尚更かもしれない。
「なんだ。恵茉や。心配するな。いつもの寝る前のまたね、だぞ」
指切りをして祖父は笑う。
時には嘘も必要だ、と目配せをする。その祖父の気遣いに咲良もまた泣きそうになる。
「親子そろってぎゃんぎゃん泣く前に、ほらはよ出発せえ」
「ん、またね! おじいちゃん」
「ああ! 元気でやりなさい。うちのばあさんに負けないようにな」
とうとう顔をくしゃくしゃにして泣き出した恵茉を抱きしめ、咲良も目に涙をためたまま祖父に手を振った。
祖父を探して迎えに来たらしい祖母の姿も見えた。二人が手を大きく振る。それから目元を手ぬぐいやハンカチで拭うのが見えて、咲良はまた泣き笑いのようになって二人が見えなくなるまで手を振り続けた。
「素敵な人たちだな。君はいいところで育ったんだね」
想いを込めたように恭平が言う。誰でもない彼にそんなふうに思ってもらえることが嬉しかった。
「……はい」
「じゃあ、行こうか」
恭平のやさしい声に促されるままに咲良は頷いて、ハイヤーが待っている場所まで戻っていく。
遠くなっていく故郷を眺めてから、咲良は祖父母の愛情にあらためて感謝をした。
恵茉は咲良にがっしりとしがみついている。頬は涙の痕でぐしゃぐしゃになっていた。
その後、三人で後部座席のハイヤーの乗り込んでからも、恵茉はなかなかチャイルドシートに座ってくれなかったり、しばらくぐずってはいたりはしたが、気に入った本を幾つか授けて恭平に相手をしてもらっているうちにようやくその気になったらしい。
ものの数分で恵茉はケロッとした顔をして本をめくっている。足をぶらぶらとさせてご機嫌な様子。今は星の王子様の挿絵入りの詩集がお気に入りのようだ。
「恭平さんは、子どもをあやすのもうまいですね。さすが、人たらしですね」