『夢列車の旅人』 ~過去へ、未来へ、時空を超えて~ 【新編集版】

(21)


 気がついたらベッドの上にいた。
 病院のようだった。
 頭が朦朧(もうろう)としていた。
 それに、顔に強い痛みを感じた。
 右腕に点滴の管が見え、左腕は痺れていた。
 ハッとして探したが、彼女を見つけることはできなかった。

 少しして医師と看護師が入ってきた。
 彼女は別の部屋にいるという。
 ほっとしたら、瞼が重くなった。
 医師と看護師の姿が暗闇の中に消えるのに時間はかからなかった。

 しばらくして目が覚めたが、頭がボーっとしていた。
 それでも、じっとしてはいられなかった。
 ナースコールのボタンを押すと、看護師が医師を連れてやってきた。
 脳震盪(のうしんとう)に加えて、顔に火傷を負っていると伝えられた。
 シートベルトとエアバッグによって助かったが、膨張速度が最大で300キロ近くに達するエアバッグの衝撃は半端ではなかったようだ。
 でも、そんなことより彼女のことが知りたかった。
 それを伝えると、医師の顔が曇った。
 彼女は地下の部屋にいるという。
 直ぐに会いたいと訴えたが、頭を振られた。
 それでも会わせてくれとしつこく頼んだが、返ってきたのは信じられない言葉だった。

「警察が検死中」

 検死? 
 えっ、検死? 

 初めて耳にする言葉が鼻と口を塞ぎ、息ができなくなった。
 体が硬直したようになり、瞳に医師の姿を焼き付けたまま気を失った。

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