君ともう一度、 恋を始めるために

「小さな頃から両親は仕事が忙しくて、遊び相手は使用人ばかりだった。学校に行っても自分だけ浮いていて、友達は出来なかったわ。そんな中で優しくしてくれるのは涼だけだった」
「玲奈」

大きな家に生まれれば、使用人である大人の中で育つことが多い。
子供と大人とはいえ主従の関係はある訳で、普通とは違う特殊な環境ともいえるだろう。
そんな生活の中で玲奈が寂しさを感じたとしても不思議なことではない。
涼にだって玲奈の気持ちが理解できる部分もある。
しかし、そのことと玲奈のとった行動とは話が違う。

「洋服も宝石もお金だっていらないから涼だけは誰にも渡したくなかった。涼さえいてくれればよかったのよ」

泣きじゃくりながら叫ぶ玲奈を、涼は黙って見つめていた。