世界一孤独なピアニストは、恋の調律師に溶けてゆく
予定を合わせて、三人で会うのは久しぶりだった。
場所は、表参道にある小さなカフェ。
季節のフルーツタルトが評判で、予約を取るのもひと苦労な人気店。
結花の「せっかくだから可愛いとこにしよう」という一言で、千紗が即座に予約を取ってくれた。
璃子が到着すると、すでに二人は席についていて、手を振っていた。
「おかえりー!リコ!大優勝おめでとう!」
「ニュースで見たわよ。すごかったね」
「ありがとう」
璃子は照れくさそうに笑い、席につく。
一通りの近況報告や、パリの話に花を咲かせたあと、璃子はそっとバッグの中から小さな箱を取り出した。
「これ……二人にお土産。パリで選んだの」
「えっ、嬉しい!開けてもいい?」
「もちろん」
結花が先に箱を開ける。
中から出てきたのは、ゴールドベースにカラフルなガラス細工が施されたピアス。
リーフ型のチャームが揺れて、まさに結花の明るい雰囲気にぴったりだった。
「うわ、可愛い……!すっごい私好み。璃子、センス爆発してる!ありがとー!」
「似合うと思って」
千紗の箱には、繊細なパールとローズゴールドのラインが交差したシンプルなネックレス。
主張しすぎず、でも洗練されていて、彼女の落ち着いた美しさに馴染むようなデザインだった。
「……すごく、素敵。こういうの、自分では選ばないけど、私らしいかも。ありがとう、璃子」
「ううん。いつも支えてくれてたから。ほんの気持ち」
プレゼントを手にして、ふたりはふわっと笑った。
「ねえ璃子、もしかして……ピアノ、やめるつもり?」
千紗が、ふと、核心に触れる。
璃子は驚いたように目を見開いたあと、少しだけうつむいた。
「……うん。やりきった、って思ったの。だからもう、十分」
「そっか」
結花は少しだけ寂しそうに、でも否定することなく頷く。
「じゃあ、これからは璃子の“好き”を応援する番だね。私たち、何があっても味方だよ」
「うん。ピアノやってる璃子も、服を好きな璃子も、全部好き」
その言葉に、璃子の胸がじんわりと熱くなる。
「……ありがとう。ほんとに、ありがとう」
この人たちと出会えてよかった。
今までピアノしかなかった私の世界が、音楽以外の色を持ち始めている――
そんな実感が、胸の奥で静かに芽吹いていた。
場所は、表参道にある小さなカフェ。
季節のフルーツタルトが評判で、予約を取るのもひと苦労な人気店。
結花の「せっかくだから可愛いとこにしよう」という一言で、千紗が即座に予約を取ってくれた。
璃子が到着すると、すでに二人は席についていて、手を振っていた。
「おかえりー!リコ!大優勝おめでとう!」
「ニュースで見たわよ。すごかったね」
「ありがとう」
璃子は照れくさそうに笑い、席につく。
一通りの近況報告や、パリの話に花を咲かせたあと、璃子はそっとバッグの中から小さな箱を取り出した。
「これ……二人にお土産。パリで選んだの」
「えっ、嬉しい!開けてもいい?」
「もちろん」
結花が先に箱を開ける。
中から出てきたのは、ゴールドベースにカラフルなガラス細工が施されたピアス。
リーフ型のチャームが揺れて、まさに結花の明るい雰囲気にぴったりだった。
「うわ、可愛い……!すっごい私好み。璃子、センス爆発してる!ありがとー!」
「似合うと思って」
千紗の箱には、繊細なパールとローズゴールドのラインが交差したシンプルなネックレス。
主張しすぎず、でも洗練されていて、彼女の落ち着いた美しさに馴染むようなデザインだった。
「……すごく、素敵。こういうの、自分では選ばないけど、私らしいかも。ありがとう、璃子」
「ううん。いつも支えてくれてたから。ほんの気持ち」
プレゼントを手にして、ふたりはふわっと笑った。
「ねえ璃子、もしかして……ピアノ、やめるつもり?」
千紗が、ふと、核心に触れる。
璃子は驚いたように目を見開いたあと、少しだけうつむいた。
「……うん。やりきった、って思ったの。だからもう、十分」
「そっか」
結花は少しだけ寂しそうに、でも否定することなく頷く。
「じゃあ、これからは璃子の“好き”を応援する番だね。私たち、何があっても味方だよ」
「うん。ピアノやってる璃子も、服を好きな璃子も、全部好き」
その言葉に、璃子の胸がじんわりと熱くなる。
「……ありがとう。ほんとに、ありがとう」
この人たちと出会えてよかった。
今までピアノしかなかった私の世界が、音楽以外の色を持ち始めている――
そんな実感が、胸の奥で静かに芽吹いていた。