政略結婚から始まる溺愛
鏡に映る自分の姿が、信じられなかった。

 純白のウェディングドレスは、驚くほど私の体にぴったりで——まるでずっと前から、私のために用意されていたみたいだった。

 「綺麗だよ、瞳。」

 背後から聞こえた声に振り向くと、狭山のお父さんが目に涙を浮かべて立っていた。
 
私を本当の娘のように育ててくれた、優しい父。

 なのに、この式には“父親”として出席できない——それが、何より悔しかった。

 その時だった。

 「ドレス、ぴったりだな。」

 気づかないうちに、高道さんが部屋に入ってきていた。

 スーツに身を包んだ姿は、いつもよりずっと真剣で、少しだけ大人びて見えた。


 「瞳、今のうちに言っておきたい。」

 彼は私の前に立ち、そっと手を取った。

 「君と初めて会った時、結婚相手はこの人しかいないと思った。」

 「えっ……?」

 思わず見つめ返す私に、彼はまっすぐな瞳で続けた。

 「瞳、俺と結婚してくれ。」

 そしてそのまま、私の手の甲に静かにキスを落とした。

 ——仮面のように始まった関係に、少しだけ、本物の光が差し込んだ気がした。

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