魔法のマーメイドクラブ
***

「アークアちゃん、一緒に帰ろう」

 ランドセルにノートをしまっていると、廊下に声が響いた。
 りっちゃんとマナちゃんが、アクアちゃんに声をかけている。
 あの二人は、わたしと同じ地区で帰り道が同じ。三年生までは三人で下校していたけど、だんだん避けられるようになって。今では、別で帰っている。

「ミイちゃんも一緒ダヨネ? 家、すごく近かったの」

 嬉しそうにするアクアちゃんに、りっちゃんの顔がくもる。

「美波ちゃんのこと、もうミイちゃんって呼んでるんだ」
「ウン♪」
「美波ちゃん、一人の方が気楽でいいみたい。三人で帰ろう?」

 ぐいぐいと背中を押して、りっちゃんが教室から出ていく。

 たしかに、最近は一人の方がいいって思っていた。気まずい空気に耐えられなくて、逃げ出したくて。
 今は、アクアちゃんは、違う。

「美波ちゃん、バイバーイ。また明日ね」

 来ないで。そう言われているようだった。
 こんなの慣れっこだし、悲しくない。
 だけど、アクアちゃんと仲良くなりたいと思っているのは、わたしだって同じなのに。
 たぶん、明日からも話せないようにくっついているつもりだ。りっちゃんは、昔から友達をひとりじめしていたから。


 とぼとぼ一人で帰りながら、橋を渡る。
 下り道を進んで、家の近くまで来たところ。ふわふわの髪の子が、電柱の横でしゃがんでいるのが見えた。

「アクアちゃん?」

 思わず声を出すと、スラッとした手を大きくふって。

「ミイちゃん! 待ってたヨ! 今日は、なにして遊ぶ〜?」

 炭酸がはじけるような笑顔が、目の前にあった。
 とっくに家へ着いていたはず。
 ずっと、ここで待っていてくれたの?
 頭に浮かぶのは、りっちゃんの顔。仲良くしてるのがバレたら、今度はアクアちゃんが仲間はずれにされちゃうかもしれない。
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