魔法のマーメイドクラブ
「……アクアちゃんも、できないことあるの?」
「もっちろん! むしろ、できることの方が少ないヨ!」

 恥ずかしがる様子もなく、アクアちゃんはエッヘンと得意げに笑った。
 どうして、いつも自信があるように見えるんだろう。アクアちゃんからは、不安や怖いっていうオーラを感じない。
 その強い姿に、背中を押された気がした。

「じつは、わたし、泳げなくて」

 クラスの子たちにはバレているけど、なるべく隠したい。できないことは、恥ずかしいことだと思っていたから。

「な〜んだ、そうゆうことネ。じゃあ、ちょっと待ってて。準備するカラ」

 バシャーンと宙にジャンプして、アクアちゃんの体がくるくると回転する。
 キレイな尾びれが足へと変わっていきながら、ストンと石へ着地した。
 まるで新体操みたいだった。手足が長くて、カッコいい。

「よし! これからオサンポしよう〜♪」
「散歩?」

 玄関から持ってきたスニーカーを、わたしの前へ置く。両足に羽がついていて、可愛らしいデザイン。
 次はなんだろう?
 アクアちゃんって、やっぱり不思議な子だな。
 はいてと言われるがまま、そっとスニーカーへ足を入れると。

「えっ、ええーー⁉︎」

 くつの底がゆらゆら動きだして、地面から離れた。
 う、浮いてる!
 手をつないで、アクアちゃんの真似をする。透明の階段を上がるように、一歩ずつ足をあげて。
 こ、怖いよ〜! 波木さんの家が、小さくなっていく。

「空の旅ダヨ〜。いってきま〜す!」
「ア、アクアちゃ〜ん、波木さぁ〜ん!」
「遅くならないようにね。気をつけて」

 笑顔で手をふる波木さんから、すぐに目を離した。
 おそろしくて、下を見ていられないよ。
 ギュッと目をつぶりながら、とりあえず足を動かす。

 どうして、こんなことになっちゃったの?
 高いところは苦手じゃないけど、空は別物だよ。次元が違いすぎて、震えが止まらない。
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