魔法のマーメイドクラブ
 小学校が見えてきた。通っているときは大きいと思っていたけど、ここからだとすごく小さい。
 誰もいない校庭から目を離して、すぐ前に交番がある。またその先には公園。
 さらに進むと、角ばったグレーの家が見えてくる。このあたりには少ないデザインで、オシャレで目立つ。

「そっちの方に、誰かの家でもアル?」

 ピトッと頬をくっつけてくるアクアちゃんに、「うぇ⁉︎」と変な声が出た。

「えっと……うん、霧谷くん」

 言いながら、顔が真っ赤になっていく。鏡を見なくてもわかる。だって、すごく熱いもん。

「あー、キリヤくん。知ってる! あのイケメンくんネ!」

 アクアちゃんも、霧谷くんのことをかっこいいと思ってるのかな。
 二人が両思いになっちゃったら、どうしよう。

「ねえねえ、もうちょっと近づいてみようヨ〜」

 下りていく腕にしがみつきながら、わたしは必死に止める。

「だ、だめだよ。見つかっちゃったら」
「ダイジョウブ。ここ、空の上だカラ。この高さだと、鳥にしか見えないヨ〜」
「でも」

 誰かが空を見上げたとき、たまたま望遠鏡をのぞいたとしたら。
 人だと気づかれて、宇宙人だとか騒がれたら……ニュースになったら。アクアちゃんの秘密が、バレちゃう。

「心配ナラ、これ食べておく?」

 貝殻のポシェットから、小ビンケースを出して。アクアちゃんが、星の形をした小さなアメをパクッと食べた。
 わたしの口へも、ほいっとアメを入れる。
 とっても甘くておいしい。何味なんだろう?
イチゴでもアップルでもない。初めて食べる味。
 ふと、伸ばしていた手が空色になっていることに気づく。
 あれ? なんだか、手の色が薄くなって……。

「手が……消えてる!」
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