魔法のマーメイドクラブ
「アメの形が残ってるあいだは、姿が半透明になるんだヨ」

 アクアちゃんの姿が、スーッと消えていく。まるで霧みたいに。
 手をつないでいる感覚だけが、残っている。
 わたしの体も、見えなくなっちゃった。

 これなら、地上へ近づいても人にバレない。
 低く飛ぼうとしたとき、後ろからバサバサと音がした。

『コレホシイ、ヨコセ』

 ふりかえると、大きな黒い物体が、翼を広げてこっちへ向かってきた。

「カラスが……!」

 わたしのスニーカーをつついて、羽を取ろうとしている。
 どうして? 今、姿は見えていないはずなのに。

「やめなさいヨ! 人の物取っちゃいけないって、おウチのヒトに教わらなかっタ〜?」

 よく目をこらすと、腕を組んで怒るアクアちゃんのりんかくが見える。

『ズルイ、ホシイ、ヨコセ』

 このカラスには、わたしたちが見えているんだ!
 次は、アクアちゃんのスニーカーに口ばしを
当てている。
 クルッと回転して、必死に抵抗するけどしつこい。羽をくわえて離そうとしない。

「カラスさん、やめて! 落ちちゃう!」

 羽のついているさかいめが、ビリッとやぶれかけている。

「もう怒ったからネ! いいかげんに、シナーサーイッ!」

 アクアちゃんが手のひらをかざすと、たくさんの雲が吸い寄せられるように集まってきた。
 なんだかあやしい雲行き。そのうちにゴロゴロと雷のような音がなり出して、カラスはあわてて逃げて行った。
< 20 / 85 >

この作品をシェア

pagetop