魔法のマーメイドクラブ
 ムシムシする坂道。アクアちゃん、わたし、霧谷くんと三人並んで帰る。
 まさか、霧谷くんと一緒に下校する日が来るなんて、夢みたい。

「キリちゃんの家、コッチなの〜?」
「えっ、キリちゃん……って、俺?」

 とつぜんのあだ名呼びに、霧谷くんに続いてわたしまで反応してしまう。
 アクアちゃん、すごいなぁ。わたしが一生かかってもできないことを、いとも簡単にやっちゃうんだもん。
 ピョンピョンと跳ねながら、アクアちゃんはニッと白い歯を見せる。

「チームケッセイするなら、みんなの呼び方決めようヨ〜! コードネームみたいナ♪」

 ワクワクと言いながら、楽しそうにしている。
 少し恥ずかしそうにする霧谷くんが、ボソッと。

「普通に、名前でいいよ。カナトで」

 ほっぺが夕日みたいに赤くなっている。
 やっぱり、アクアちゃんのこと好きなのかな。
 胸の奥がギュッとしめつけられて、苦しい。

「カナト、ワカッタ! じゃあ、アクアはアクア。ミイちゃんはミイちゃんネ♪」
「えっ⁉︎」

 ふと霧谷くんと目が合って、すぐにそらした。
 いきなり呼び捨てなんて、わたしにはハードルが高すぎる!

「わ、わたしは、カナト……くんにするね」

 ひゃあ〜。初めて名前で呼んじゃった。
 さっきの霧谷くんと比べ物にならないくらい、顔が真っ赤だとわかる。

「じゃあ、これからアクアとミイで。よろしく」

 もう一度、霧谷くんの顔を見た。たぶん、お互いに照れているから、まともに目が合わなかったけど。

「よ、よろしくね」

 ドキドキふわふわして、空を飛んでいるときに似ている。
 あれほど遠い存在だと思っていた霧谷くんに、少しだけ近づけた気がした。
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