魔法のマーメイドクラブ
「……ありがとう。でも、これは使えないかな」

 自分だけ魔法の力でゴールするのは、よくない。
「練習すればいいじゃん。付き合ってやるから」
 パチクリと目を大きくして、カナトくんを見た。
 今、とんでもない言葉が聞こえた気がするんだけど。都合のいい空耳じゃないよね?

「よぉし! アクアが専用プール作ってあげるネ!」

 そう言って、アクアちゃんがテントの端に小さな丸い石を置く。
 クリアピンクの石は、グングンと大きくなっていき、あっという間に水の入ったプールが出来上がった。

「うわぁ……、すごい。ほんと、なんでもできるな、アクアって」
「エッヘン!」
「その石、あとで見せてよ」
「イイヨ〜♪」

 もっと褒めてと、ニコニコするアクアちゃん。
 胸の奥がギュッと苦しくなる。
 こうして見ると、すごくお似合いなんだもん。
 楽しそうに話している二人から目をそらして、少しうつむいた。

 アクアちゃんの運命の人が、カナトくんだったらどうしよう。
 アクアちゃんのこと大好きなのに、心がモヤモヤするよ。

「ミイちゃーん! 聞いてルー?」

 クリクリの目がのぞきこんできて、ハッとする。

「あっ、ごめんね! ボーッとしちゃって。なんだった?」

 ほわんと笑って、いつもと同じように話す。
 アクアちゃんは、優しくて大切な友だちだもん。この関係を壊したくない。
 だから、今出てきた気持ちは、胸の奥へとしまい込んだ。
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