魔法のマーメイドクラブ
 今日から臨海学校までの一ヵ月半、水泳の特訓をすることになった。
 水へ入ることすらイヤだった時に比べて、今は潜って目を開けられるまでに成長した。ゴーグルなしでできるなんて、数週間前のわたしからは考えられなかったの!

「手はまっすぐ。ひざは曲げない」
「はい!」
「ダズが変身魔法を使ったときみたいに、イルカの気持ちになるとわかりやすい」
「は、はい!」

 カナトコーチはスパルタだけど、わかりやすく教えてくれる。
 時々わからないけど……ダズって誰だろう?
 前に話してくれた、ファンタジー映画の人かな。 
 でも、まだ緊張しちゃう。意識しないようにしても、無理なの。

「じゃあ、ここまで泳いできて」

 手を広げて、カナトくんが待つ二十五メートル先へ向かう。ビート板を使っていても、息が苦しくてもたない。
 それでも必死に進んで、なんとかたどり着いた。

「よし、今日の課題クリア」

 手を持たれて、ドキッとする。
 距離が近すぎて、勘違いしそうになっちゃう。カナトくんは優しいから、手伝ってくれているだけなのに。

「ヤッタネ〜♪」

 となりを泳いできたアクアちゃんが、ニコッとピースをした。
 エヘヘと少し照れながら、わたしはハイタッチをする。
 ほんとに少しずつだけど、泳げるようになってきた。もっともっと頑張りたい。
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