魔法のマーメイドクラブ
「アクアって、やっぱ泳ぎ方キレイだよな」

 目の前のカナトくんから、そんな言葉が飛び出した。

「そうカナー? カナトの泳ぎもカッコいいヨ!」
「いや、教えてほしいくらい。さすがは人魚。別格だよ」

 そんなキラキラした目で、アクアちゃんのことを見ないでよ。
 胸がズキンとして、苦しくなる。
 わたしと比べているわけじゃない。アクアちゃんの泳ぎが特別にすごいのは、当たり前に知っていること。

 でも、わたしはダメな子だって言われているみたいで、悲しくなった。
 どんなに頑張っても、わたしはアクアちゃんにはなれない。

「……ミイ? 大丈夫?」

 じわりと浮かんだ涙を、指で隠す。
 気づけば、カナトくんが心配そうにこっちを見ていた。

「疲れた? 休憩する?」

 パシャパシャと顔をなでて、泣いたあとをごまかす。

「もう一回だけ練習したら。カナトくんは、アクアちゃんと先に休んでて。練習付き合ってくれて、ありがとね」
「……そう。じゃあ、お先に」

 軽々と水から上がったカナトくんが、ふり返ってしゃがみ込む。

「無理しすぎるなよ」

 わたしだけに聞こえる声が、余計に胸をドキッとさせる。さっきまでの不安を、嘘のようにかき消す。
 まるで、カナトくんは魔法使いみたいだ。
 パチパチとほっぺをたたいて、気を引きしめる。
 二人の足を引っぱらないために、もっともっと頑張らならなくちゃ。
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