魔法のマーメイドクラブ
 * * *


「なに……これ。なにが、あったの……?」

 秘密基地で泳ぐ練習を始めた、十一日目のこと。六月の終わりに、事件は起きた。
 草っ原に置いてあったテントが、何者かによって壊されていたのだ。

 見た目は、犬小屋ほどの小さな物。砂だらけになっていて、ところどころ切られたような傷もある。
 わたしとカナトくんは、言葉を失ったように立ち尽くしていた。
 そばに落ちている破れた布を、アクアちゃんがそっと拾う。

「せっかくの、ヒミツキチ……。悲しいネ」

 いつも明るいアクアちゃんが、とってもつらそうな顔をしている。ズキンと胸の奥が痛む。
 みんなで好きな物を持ち寄った、自分たちだけの居場所。たくさんの思い出があって、これからも増えていくはずだったのにーー。


「……誰が、こんなひどいこと」

 くやしそうに、カナトくんがくちびるをかむ。
 わたしも二人と同じ気持ちだよ。悲しくて腹が立って、涙が出てくる。

「基地の中はどうなってるか、たしかめてみよう」
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